経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.038 ライフネット生命保険株式会社(岩瀬大輔氏)

ベンチャーだからこそ優秀な人材を採用すべき ライフネット生命保険株式会社(岩瀬大輔氏)

戦後初の独立系生命保険会社として2008年の開業以来契約件数を伸ばし続け、2011年9月に保有契約件数が9万件を突破したライフネット生命保険株式会社。同社の代表取締役副社長 岩瀬 大輔 氏に採用に対するこだわりや、ご自身の役割についてお話を伺いました。


樋口:
面接は短い時間でおこなわなければならないことが多々ありますが、岩瀬さんの場合、面接の中で何か感じるものがあったり、直感が働いたりするのでしょうか。あるいは、話すうちにイメージが湧くのでしょうか。

岩瀬:
じっくり話して印象が変わる場合もありますが、大体は部屋に入ってきた瞬間にわかりますね。採用したいと思う人は、表情が良かったり、明るいオーラが出ているのを感じたりします。当社のようなベンチャー企業は将来どうなるか分かりませんし、不確実なことも多かったりします。ですから根本から楽観的で、周りを明るくすることが出来るかも大切な要素です。また、応募段階のメールでも良い人は分かります。文章はある意味フリースタイルですから、無限のパターンがあり得ます。応募書類よりも、特に一緒に添えられた文章に人柄が出ますね。送られてきた文章やメールを読んで良いと感じた方は、実際に会ってみても良い印象を持つことが多いです。

明るさ以外に、「一緒に働きたい」と感じる要素はあるのでしょうか。

当社では中途採用を主にしておりますので、仕事内容に見合った経験や実績は必須となります。ですから採用する人材は、若くても20代後半の方です。その分野で腕が良いという大前提の上で、明るさや人柄の良さを見ています。

業務上の腕の良さも、岩瀬さんが判断されるのですか。

応募書類に書かれた経歴を見て分かることも多いですが、主に私の前段階に面接をしている現場社員が判断しています。実際に一緒に働くことになるのも、必要なスキルを一番理解しているのも現場の社員です。現場の社員の目は私以上に厳しく、面接では保険事務なら保険事務の担当者が、ITならITの担当者が専門的な質問を徹底的にしています。ですから実務面の判断に関しては現場社員の目を信頼し、私はそれ以外の部分を見るようにしています。過去に私自身が面接をして判断を迷った人材でも、現場の社員達が絶対に良いと判断して採用した人材もいますが、皆活躍しているという実績もありますしね。


かなり人材を厳選して採用していらっしゃるのですね。それは設立当初からなのでしょうか。

応募要項は、採用を始めた当初から敢えてハードルを高めに設定しています。なかにはベンチャー企業なのにそのような良い人材は採れないだろうと言う方もいましたが、私はむしろ逆だと思っています。実績のないベンチャーだからこそ、良い人材を採用して、最高のチームにしなければならないのです。そのため初めから、どんなに忙しくても納得する人材に出会わない限りは採用しないと決めていました。また、もともと優秀な人材ばかりのチームだと、チームに迎えた時にどうなるかをメンバーが各々で想像しますので、レベル感の合う人材が厳選されるという好循環が生まれるのです。
ちなみに開業前の2007年は、応募のあった6名全員を採用しました。一見大胆な決断ではありますが、理由を考えると実はとても理にかなったものでした。彼らには、当時3名しかいなかったネットライフ企画(ライフネット生命保険の準備会社)を探す情報感度や、設立後の姿を想像して、社会的に大事なことをやろうとしているな、おもしろいなと感じる感性、さらに当時勤めていた会社を転職してまでリスクの大きいベンチャーに飛び込もうとする行動力や判断力が伴っていたのです。現在では、少しずつ名も知れてきているので、入社を志望してくれる方も増えましたが、設立間もない当初にそのように感じて動ける人材は、まさに当社が求める人材に合致していました。彼らは現在も当社を支えてくれており、そこから人材の好循環が始まっているように思います。

初期段階の採用で良い人材がそろったからこそ、良い流れができているのですね。

そうですね。出口(出口 治明 氏 ライフネット生命保険 代表取締役社長)と年齢が離れていることで問題にならないか、とよく質問されるのですが、一番良かったと感じるのは人の好みが一致していることです。例えば、当社取締役の中田(中田 華寿子 氏 ライフネット生命保険 常務取締役)とは入社以前から付き合いがあり、私が彼女を当社に誘いました。彼女の前職は保険とは全く別の業界です。しかし、私はかねてから当社では保険のマーケティングよりもブランドマーケティングをやるんだ、と考えていましたので、一流のB to Cのマーケッターが必要だと思っていたのです。彼女は私にとって最高の人選でしたが、実は当初は出口に共感してもらえるか懸念もありました。実際には彼もすぐに気に入ってくれました。当初は大企業で働いていた出口と少数精鋭の組織で働いていた私とでは人材の許容範囲にこそ差がありましたが、今は完全に理解してくれています。人を見る目には絶対的な基準があるわけではありません。ですから良いと思う人材のタイプが同じだったことは大変助かりました。