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経営と現場社員の目指すベクトルが合っているかが会社の強さ ワタミ株式会社(岡田武氏・平岸敬吾氏)

経営と現場社員の目指すベクトルが合っているかが会社の強さ

樋口:
先ほどと同じような質問に戻ってしまいますが、理念共有のための取り組みにはお金が掛かると思います。また嫌がる人も、うるさいなと思う人もいるかもしれませんし、もしかしたら離職の引き金になるかもしれませんよね。社長自らがそこまでまじめにされているのはなぜなのでしょうか。

岡田:
経営と現場社員の目指すべきところ、ベクトルが合っているかどうかが会社の強さだと思うのです。その会社の歴史は今日いるみんなで創っていくものです。同じ思いを共有できていなければ、未来は創っていけません。もう一つは、未来に向かっていくときに、みんなの夢や目標がワタミの中にあるのか、ないのかも会社を強くするためにすごく重要だと思っています。もちろんみんながみんな大きな夢を持っているわけではないので、目先の目標でもいいのですが、会社が目指している方向性と、みんなの夢や目標を確認するために、研修などの環境をつくってすり合わせているのです。

平岸:
学生の方によく聞かれる質問に「ワタミの強みは何ですか」というものがあるのですが、私はいつも「人だよ」と答えています。いっぽうで「弱みは何ですか」と聞かれたときにも「人だよ」と答えています。会長の渡邉がよく言っているのですが、和民というお店はただの居酒屋であり、ワタミの介護はただの介護のホームであり、ワタミの弁当宅配はただの弁当宅配であると。別にそんなに安いわけでもないのになぜ28年でここまで支持を得てきたのか。それは働く人が違っただけだと。ワタミは「人」でここまできたと思っています。なぜお金と手間がかかるのに理念の共有にそんなに力を入れるのか。確かに外から見ればそうだと思います。ですが、例えばメーカーさんは不完全な商品を世の中に出すわけがないですよね。メーカーさんが研究開発や製品に対してお金を掛けるのと同じように、私たちも最大の武器にお金を投資することは全然不自然なことではないのです。逆に言えば、そこしかないのです。そこに投資をしないと勝ち続けることは出来ないと考えています。

樋口:
海外の社員が2,000人というお話がさっきありましたが、海外でも今同じことをやっているのですか。

岡田:
海外は中国本土、香港、台湾、シンガポール、マレーシアに出店しています。日本人は20人ほどで、あとは現地採用です。毎年、海外から人材担当者が日本の理念研修を見に来て、海外でも手帳や理念集を活用するなど理念を重視した採用・教育を行っています。

樋口:
チャレンジングですね。最後の質問ですが、お二人の今の仕事のモチベーションのよりどころについて教えてください。御社のような会社で人材開発や採用という仕事をされる方が、どういう時にやりがい感じていらっしゃるのか非常に興味があります。

岡田:
創業者の渡邉が社長を退き会長に就任したのが2009年です。ここで経営の第一線から退くことを渡邉は決断しました。そのほうが、100年先に、より「ありがとう」を集められる会社になるだろうとの考えからです。その頃から皆で考えて生み出していこうという集団指導体制に移行しました。
大変なこともありますが、この転換期を乗り越えた先には同じ価値観を共有しながら、もっと一人一人個性がある人たちが生まれてくる会社になるのではないか、強い会社になるのではないか、もっと世の中から必要とされる会社になるのではないかと思っています。集団指導体制の中での理念浸透の仕組みを構築し、みんなでワタミの未来をつくっていくことが、今の自分のタスクだと思っていますし、やりたいことですね。

平岸:
私は就職活動をしている学生の皆さんに、ワタミの考え方を伝えて、何かいい影響やきっかけを与えることが出来ればな、と思っています。また、ワタミだけではなく、外食の仕事と介護の仕事のステータスをもっともっと上げていきたいですね。この業界で働く楽しさや魅力をしっかり伝えていかなければならないという責任意識があります。
一人でも多くの学生がワタミの説明会で話を聞いて、働くって辛いことではなく、楽しいことなんだと感じてもらえれば嬉しいですね。 

樋口:
やはり価値観の共有に意義とやりがいを感じていらっしゃるのですね。御社の強さが見えたような気がします。本日はありがとうございました。

 

 

CompanyData

ワタミ株式会社

■会社名:ワタミ株式会社
■代表者:代表取締役社長 桑原 豊
■所在地:東京都大田区羽田一丁目1番3号
■URL:http://www.watami.co.jp/
■事業内容 :
 ・外食事業
 ・介護事業
 ・宅食事業
 ・MD(マーチャンダイジング)事業
 ・農業
 ・環境/メンテナンス事業