経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.041 株式会社ネクスト(板谷隆一氏)

5人のような1000人の会社を作りたい 株式会社ネクスト(板谷隆一氏)

樋口:
御社のようなDNAの濃い組織が強い組織になっていくのでしょうね。ところで御社で選ばれるリーダーとは一体どのような人材なのでしょうか。


羽田:
人事制度で昇格の対象になるのは理念や社是に完全に合致している人材であり、なおかつ能力の高い人材です。ちなみに業績には、賞与で報いています。

板谷:
先ほど360度フィードバックをご紹介しましたが、その他にも自身で「利他貢献」目標も設定しています。もともと「自利利他」という仏教用語がありますが、その一部を取って目標としているのです。

私は経営層を「責任を楽しむゾーン」だとよく表現しているのですが、組織に対して責任を持つようになると、損をすることも多く、利他の精神がなければ続きません。ですから、経営者は結果的に利他主義の方が多いように感じます。しかし、それは責任が高まるにつれて徐々に身についてくるものでもあると思います。20代の学生にそれを求めるのは少々難しいようにも思いますが・・・。

板谷:
しかし最近の大学生は、社会貢献欲求がとても高くなってきたと実感しています。例えば地域活性や情報の非対象性を解消することに対し、アンテナが立っている学生が多いです。

おっしゃる通り、最近は一流大学を卒業し、外資系のコンサルティング会社に就職できる超優秀層の人材が社会貢献をまじめに考えており、NPOを立ち上げていたりします。「短期的には損をしても、その方が企業にいるよりも後々得られるメリットが大きい」と分かっているのです。彼らの社会貢献はスケールが大きく、合理的に戦略を考えています。企業は徐々にそういう人材を囲えなくなってきていますね。

板谷:
そこが残念なところです。そういう人材が集う会社が当社の目指す姿です。自分1人ではやはり資金も、知識も、経験も、コネクションもないけれど、自分がやりたいと思っている事業や貢献はネクストに行けばできると感じてほしいですし、私達もそういった学生をより多く採用したいと思っています。

御社におけるリーダー像についてお話を戻しますが、人事のトップとして板谷さんご自身が普段気をつけていらっしゃることはありますか。

板谷:
まずは自分自身がビジョンカードの内容に反することをしないということです。ただ単に役員が発言を社員に押し付けていると受け取られないように、発言や判断軸が、ガイドラインのどこに沿っているかは、強く意識しています。

もし仮に経営理念やガイドラインに発言や判断が沿っていなかった場合、周囲から指摘されることはあるのでしょうか。

板谷:
私は誰でも指摘できる環境だと理解しています。実際に「板谷さん、これはガイドラインで言っていることと違いますよね」と言われたこともありますから。このような指摘をもらった場合には、ビジョンカードをベースに話し合うようにしています。例えばこのカード1枚をとっても、見る角度によって見え方は異なります。
これと同じように中に書かれていることについても、その人の経験や知識、その場の環境によって結論が変わってくるのです。これを話し合いを通じてすり合わせることこそが、骨を強くすることだと私は考えています。ですから逆に表だって指摘しない社員の方がもったいないと思います。
組織のガイドラインの中にも「私たちは活性化した組織を永続させるため、情報をオープンにし、率直で建設的なコミュニケーションを図る」というものを掲げており、それを体現しようと社員にも伝えています。
よく代表の井上と「5人のような1000人の会社を作りたい」と話しています。そのためには、設定したガイドラインを単に左脳で覚えるのではなく、心で感じてお互いに確認し合いながら行動に移せるような会社を作っていきたいと思っています。

ビジョンの共有は、コミュニケーションコストがとてもかかると思いますがかなり力を入れて取り組んでいらっしゃるのですね。たとえば、ビジョン以外の新しいアイディア等も活発に議論されているのでしょうか。

そのような姿を理想としています。一方でスピードを優先させるとトップダウン気味になってしまうこともありますが、現場から「それはおかしい」という声が上がってくると、すぐにフラットな状態で聞く姿勢はできています。今ちょうど新規事業を私が兼任で担当していますが「私はこうしたいと思うが、君たちはどう思うか。まとめて一緒に議論しよう」という提案をこちらからするように心がけています。

マネジメント側が話を聞く姿勢で接しているのですね。

そうですね。もちろんマネジメント側も自分達の心の中に「こうしたい」という思いはあります。ただそれを合意形成のもとでしていくのか、一方通行で押し付けるのかでは結果がまったく異なりますから、必ず現場の話を聞きながら合意形成をしていくスタンスで経営していると認識しています。

どちらが正しいかはケースバイケースですし、難しいお話ですね。合意形成を重視するとどうしてもスピードが落ちてしまいます。

全て全員の合意を得て決定しようとすると、なかなかまとまりませんから、バランスを見ながら進め方を調整しています。大切なのは本人達の納得度合いだと思います。きちんと話ができる機会をもらった、意見を言える環境がある、その上で決定がある方針に従ってなされているのであれば納得できます。しかし事前に確認が全く何もないまま決定を押し付けると、当社では理解を得られませんし、反発も出てしまいます。ですから必ず合意形成のプロセスを経て決定するようにしています。


ありがとうございます。事前にも御社のホームページから感じましたが、本当に熱い会社で、こだわりがとても強いですね。御社はそういった強い価値観から生まれるエネルギーで成長されていることを、お話を伺って強く感じました。本日はありがとうございました。


CompanyData

株式会社ネクスト

■会社名:株式会社ネクスト
■代表者:代表取締役社長 井上 高志
■所在地:東京都港区港南二丁目3番13号 品川フロントビル
■URL:http://www.next-group.jp/
■事業内容 :
 不動産情報サービス、地域情報サービス、金融情報サービス、健康・医療情報サービス