経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.041 株式会社ネクスト(板谷隆一氏)

5人のような1000人の会社を作りたい 株式会社ネクスト(板谷隆一氏)

樋口:
中途採用と新卒採用に選考の違いはあるのでしょうか。

羽田:
新卒採用では、3回の選考を通過した全ての学生に採用担当者をアドバイザーとしてアサインしています。そして長い場合には、約半年の期間をかけて学生本人のやりたいことを深掘りして聞き、本人の価値観を見極めつつ、進路を定めるお手伝いをしています。その進路が当社の経営理念と合致する場合は次の選考に上げるようにしていますし、もし合わないと判断した場合には本人に合う企業を勧めることもあります。この取り組みを始めてから、共感度や方向性の不一致はかなり減りました。

新卒採用に成功している会社は、応募者との接点回数を例外なく増やしています。1ヶ月で内定を決めている大企業にはすぐに取り入れるのは難しい方法ですが、今取り組まれているように、選考の期間と回数を増やすというのは、非常に有効なやり方ですね。

板谷
接点や期間を増やすと人事だけでおこなうのは難しくなりますから、現場のメンバーにも協力してもらっています。学生が役員面接にチャンレンジするまでの過程をサポートするのですが、当社の経営理念を一緒に実現する仲間を育てるという感覚です。

そもそも新卒採用で御社が求める人材はどのような人材でしょうか。

羽田:
採用の基準については大きく2つあります。1つ目は、採用候補者の価値基準が当社の社是・ガイドラインと合致し、個人個人の目標や成し遂げたいことのイメージが経営理念とリンクしていること。2つ目はスキルです。これは「すごい、賢い、気持ちいい」と表現しており、「すごい」は行動量や過去の実績を見ています。たとえば「学生時代に学生団体を作って代表として何万人集めました」といったような何か自分で目的を持ち、それに対して行動して成果を上げたといったことです。「賢い」は論理的に考え、論理的に話せるということ、「気持ちいい」は気持ちのよいコミュニケーションが取れるということです。先ほど板谷からも申し上げましたが、当社ではリクルーターとして現場の社員にも採用活動に参加してもらっているので、浸透しやすいように簡単な言葉で表現しています。

かなり手間がかかっているように感じますが、現在の新卒採用に対する満足度はどのくらいですか。

羽田:
数についても質についても満足しており、今後も継続して高めていきたいと考えています。また今年から海外に進出しているので、今後は海外大学生の採用も進めていきたいです。

板谷:
海外に進出するにしても、日本本社の雰囲気を持って現地で利他主義を実践できるようにしたいので、日本で経験を積み、スキル、知識を身につけて海外に行ってもらうのが理想です。私自身も海外勤務を経験していますが、日本から海外に展開するにしても、最終的にはローカリゼーションを進めていかなければなりません。結局トップを日本人が占めていたり、日本式の仕事のやり方を貫いていては、うまく地元に展開できません。逆に早い段階でその国に権限を移譲してしまえば、その国の文化の中で人材育成やビジネスが進んでいくでしょう。5年、10年はかかるかもしれませんが、これが私たちの理想なので意思を持って取り組んでいきます。日本という括りの中だけで活動していれば、チャンスは減る一方です。しかし日本で育っているビジネスは、国外に出れば成功する可能性は高いですし、現地の方々に寄与できる可能性も非常に高いです。当社が不動産ポータル事業を海外に持っていくと決めたのは、現在の中国や東南アジアに不動産ポータル事業を持っていくことで、より良い住まい探しが提供できると考えたからです。ですから括りを自ら取っ払って、経営理念である『常に革進することで、より多くの人々が心からの「安心」と「喜び」を得られる社会の仕組みを創る』を実現するためにも海外に出て行こうと社内に発破をかけているのです。

採用も海外への展開もビジョンに沿って行われているのですね。これから採用しようとする学生さんに向けてメッセージがあればお願いします。

板谷:
私は本当に本気でこの国を、この世界を変えたいと思っている人に集ってほしいと考えています。自分自身が当社に入るときに、「国でできないことをこの会社でやりたい」と宣言して入社しました。ですから同じような想いを持っている人材を1人でも多く採用したいのです。地頭の良さよりも、一生かけて自分が成し遂げたいことがある人材、1人でも多くの人に安心と喜びを提供したい人材に集ってほしいです。

羽田:
当社の採用に限らず、早い段階にやりたいことを見つけてもらいたいと思います。もちろんビジネスとしてですから、それは単純に自分がやりたいだけではなく、社会的意義という観点が入っていなければなりません。そして、それができる会社を探すことが、本人にとっても、日本にとってもよいことだと思います。ぜひそういう軸を1本持って就職活動をしてほしいです。

これまで価値観重視の採用について伺ってきましたが、価値観の共有を最優先にすると、例えば人がうまく採用できなかったり、事業の拡大が急速にできない、ということも起こるのではないかと思いますが、その辺りはどのようにとらえていらっしゃるのでしょうか。

板谷:
そのような障害が出てくることもありますが、社是・経営理念・ガイドラインは当社が事業を進めていく中での骨であり、そこを曲げることはできませんし、譲れないところなのです。
サービスの提供においても、これらに沿ったサービスとなるよう、基本的には全て内製にこだわりたいと考えています。どうしても専門性やスピードを考えると対応が難しいときには、外部との連携を取り入れるようにしています。ただし、そこでも当社の行動規範や思いに共感していただける企業とパートナーシップを結ぶようにしています。

現在そのこだわりがないことが原因であまり経営が上手くいっていない企業が増えつつあるように感じます。会社の姿が「給与を得る場」ではなく「価値観共有の場」として求められる時代に入ってきたのでしょう。

板谷:
適切な例えかどうか分かりませんが、経営はある種の宗教に近いと思うことがあります。大切にするものが教典か経営理念か、という違いはありますが、それを信じられる人がそこに集っているかどうかがその会社の根本的な強さになるのだと思います。