経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.037 アサヒビール株式会社(丸山高見氏)

異質な環境に「どっぷり」漬かるのが成長のもと アサヒビール株式会社(丸山高見氏)

日本を代表する飲料メーカー、アサヒビール株式会社。2009年に創業120年、設立60年を迎え、さらに成長を続ける同社常務取締役人事部長 丸山高見氏に、同社の人材育成のこだわりや、ダイバーシティへの取り組みについてお話を伺いました。


樋口:
丸山常務のインタビュー記事を拝見したのですが、人事に至るまでに色々なご経験をされ、そのご経験が今に活かされているとありました。そこで丸山常務の育成に対するお考えに興味を持ったのですが、仮に丸山常務ご自身が御社の人事を支える人材を一から育てるとすると、どのような経験を積ませたいとお考えですか?

丸山:
その人によって適性が違うので、色々な道筋があると思いますが、企業として活動する以上お客様に喜んでいただく、世の中に貢献するという意識が必要です。ですから、最初はお客様に接する機会の多い営業を経験させることが多いですね。私自身も最初は営業を経験しましたし、子会社への出向も3年間経験しています。また労働組合専従も経験しました。今振り返ると、非常に貴重でありがたい経験であったと思います。
今後の人材育成を考えると、今はこれだけ世の中がグローバル化していますから、海外など自分とは異質な世界に触れる機会が重要になってくるでしょう。そこで当社では「武者修行」という研修をおこなっています。

「武者修行」とはどのようなことをされるのでしょうか。

武者修行にもいくつか方法があります。例えば、一週間優秀なトップセールスマンと行動を共にしたり、工場勤務の熟練した先輩にずっとついて技術を習得する「国内武者修行」。さらに、一年間他業種の企業に出向する「社外武者修行」。また、当社の営業所や拠点がある国で約半年間、それまでの仕事とは離れて市場のリサーチや新しいアイディアを考え、帰国後に事業への提言をおこなう「国際武者修行(グローバル・チャレンジャーズ・プログラム)」というものもあります。国際武者修行に関しては、昨年は社内公募で122名の応募があり、10名を7カ国に派遣しました。ここで1つキーワードとなるのが「どっぷり」という言葉です。研修はOJTとOFF-JTの二つに分けられます。OFF-JTも刺激にはなりますが、やはり実際には仕事の中や環境、文化等に「どっぷり」漬かった経験で成長するものだと思っています。

非常に興味深いお話ですが、一見仕事には関係がないような経験をさせることの意義はどのようにお考えなのでしょうか。

当社はいわゆる「日本企業としての社風」が強く、同じ方向に向かっていくことは得意である一方、同質化しがちだともいえます。イノベーションに必要なのは異質なものが起こす良質な対立です。多様性がなければイノベーションは起こりにくいのです。今後時代の変化を乗り越え、生き残っていくためにも多様性のある組織にすることが必要だと考え、人材育成の観点から取り組んでいるのです。


今現在人事部でお仕事されている方も多様な経験をお持ちの方が多いのでしょうか。

今16名おりますが、営業出身の者もおりますし、人事総務畑で来たものもおります。ただし、ずっと人事総務畑を歩いてきた者も内外の環境変化の中で色々な経験は積んでいます。個性はバラバラですが、お客様志向です。もちろん英語の得意な者もいます。

多様性を重視されているとのお話ですが、新卒採用においても色んなタイプの人材を採用されるのでしょうか。それともやはり似たような方を採用されるのでしょうか。

当社には人と連携しながら仕事をする、仲間を大切にするという良い風土がありますので、その点は採用時点でも重視しています。ハートがよく、素直で、明るく、前向きに考えられること、人を大切にすることができる人材を採用しています。それ以外の面では、個性や経験はバラバラで、非常に多彩です。よく体育会系の会社だと言われますが、もちろん体育会系でない方も採用しています。また男性中心の会社に見られがちですが、昨今は女性の採用も増え、更に外国人の採用も積極的におこなっています。

他の企業様でも女性の採用が増えているというお話をよく伺います。御社の場合は意図しておこなわれているのでしょうか。それとも採用時点で女性の優秀な人材が増えているということなのでしょうか。

選考では全く公平に選んでいますので、優秀な女性の志望者が増えたということでしょう。女性の応募者は、非常にしっかりしているように思えますね。