経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.034 株式会社テラスカイ(佐藤秀哉氏)

「自分の能力が会社の限界」にしたくない 株式会社テラスカイ(佐藤秀哉氏)

樋口:
採用をしていると、学生にしても、経験者にしてもよい人材は他社と取り合いになるのではないかと思います。その場合、御社では応募者に対してスキルやキャリアなど働くメリットをどのようにPRしていらっしゃるのでしょうか。

佐藤:
前提として私はこの業界が面白そうだ、この会社が面白そうだと魅力を感じていただける方に来ていただきたいと思っています。私たちの現在の立ち位置であるクラウドのポジションは、IT業界の中でも非常に伸びている最先端のテクノロジーであり、ビジネスモデルです。今まさに変革期の渦の中心にあると言えるでしょう。ですから、待遇や労働時間よりもまずそこに魅力を感じている人材、その渦の中から自分で吸収していこうという気概のある人材を採用したいと思っています。もちろん残業を多くしてほしいというわけではなく、定時に来て定時に帰るというスタイルで十分です。ただし、その中で成果を出せるように自分で工夫する人材が良いですね。ですから応募して下さった方々には、素直に正直に私たちのビジネスや会社の方向性の話をするようにしています。

一番の惹きつけ要因は事業内容や仕事内容なのでしょうね。そのため自然に情報を出しながら、すり合わせをしていくことが一番効果的なのでしょう。ところで採用した人材の育成についてはどのようにお考えでしょうか。


私たちのサービスはクラウドの最先端テクノロジーを活用したソリューションサービスですから、技術の基礎知識について研修をすることはあります。ただし、中途入社者は皆さんそれまでの経験があることが前提ですから、台座を投げた後はそれぞれで咀嚼して自分のものにしてください、というのが会社としての基本姿勢です。我々が力を入れているのは研修そのものよりも、各々の学びを促進する環境づくりです。具体的には質問しやすい雰囲気作りやいつでも参照できるデータベースの整備などです。このような環境を活用して自分の力を高めていく人材はどんどんサポートしていきたいと考えています。

向上心のある人材は環境を与えるとどんどん成長していきますからね。お話を伺っていると、御社は基本的に社員の自主性を尊重しているように感じているのですが、役員などのマネジメントにはどのような方を登用していらっしゃるのでしょうか。

システム開発現場のマネジメントは、言い換えれば大工の棟梁のようなものです。社員一人一人がスキルを持った技術者ですから、現場の社員から尊敬が集められなければ、誰もついてはきません。私自身はマネージャーやリーダーにも1つの決まった形があるわけではなく、それぞれ個性があっていいと思っています。そのため現場の社員が「あの人の下で働きたい、あの人と一緒に仕事がしたい」と思っていれば、マネジメントスタイルは問いません。ただし、リーダーやマネージャーには周囲の現場社員に認められるようパフォーマンス、言動、スキルなどあらゆる部分において模範的な人であり続けてほしいですし、会社としてもそのような風土を作っていきたいと考えています。

リーダー、マネージャーとして成果が出せるかどうかは、組織の大多数である現場社員に認められるかどうかがカギということですね。先ほど前職のIBMに影響を受けているというお話がありました。私自身も新卒で入社した日本ヒューレット・パッカードに強い影響を受けていますので、そのお気持はよくわかります。具体的にどのような点で影響を受けているのかを教えていただけますか。


先ほど社会に対する価値観もIBMに影響を受けていると申し上げました。IBMには「社会とともに」という標語がありますが、私自身も何か社会に貢献したい、社会に貢献できるものを何か残したいという想いが強くあります。私の社会への貢献方法を考えた時に、会社という器を少しずつ大きくしていき、社員とその家族、それに関わるお客様が幸せになれるようなコミュニティーを広げていくことだ、と思い起業しました。IBMでは仕事一つ一つが社会に対しての貢献度を求められていました。当時の上司に、『ある決断をする時には必ず「IBMにとって有意義な決断か」「顧客にとって有意義な決断か」「社会通念上評価される決断か」の3つの視点で検討しろ』と教わっていました。このように相対の2極ではなく、3次元で物事を判断することで学ぶことが多くありましたし、鍛えられました。ですから当社の社員にもこの視点で社会との関わりを大切にし、周囲から「良い仕事をしているね」と言われるような仕事をしてほしいと思います。