経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.028 キューアンドエー株式会社(金川裕一 氏)

キューアンドエー株式会社(金川裕一 氏)

樋口:
お話は変わりますが、金川社長は「社員は家族だ」という表現をされていますね。
やはりどんな人材でも鍛えてあげないといけないとお考えですか。

金川
自分の家族であれば、産んだ責任がありますので、当然育てますよね。企業も同じだと思います。企業は採用時に自分たちが良い人材を採りたいがためによく魅せようとPRしますし、ラブコールもします。そうして採用したにも関わらず、「良い人材はそのまま残って、ダメな人材は辞めていけばいい」という考えの企業もあるようですが、それではあまりにも無責任です。私は採用した以上、企業には育てる責任があると思っています。もちろん本人が「親から離れたい」「独立したい」と希望すれば、「お疲れ様でした。これからもがんばってください。」と送り出します。しかし、「パフォーマンスが低い」という理由だけで「要らない」というのは、信じられません。仮にそうであったとしても、見る目がなかったのは自分の責任です。ですから自分が責任を負うべきです。

採用は極めて大切ですね。金川社長が人を見抜く上でのコツやノウハウはありますか?

言語化されたものではありませんが、私が横河電機にいたころ、当時社長であった美川さん(美川 英二氏)のおかげで人を見る目はずいぶん養われたと思います。美川さんが私に会社を作らせてくれた(※注:キューアンドエー社は横河電機の社内ベンチャーとして設立された横河マルチメディアが前身)のですが、その時に社長の心得として「交際費をたくさん使って一流の人達と一流の場所でたくさん会いなさい。そうすれば人を見極める力が養えるはずだ。」ということを教わりました。それで私はある程度その通りに実行させていただき、さまざまな方たちとお会いしてきました。また仕事上でも、人に関してたくさんの失敗をしてきました。短期的な売上や利益を重視したために、自分の直感に反する選択をして、後からしっぺ返しを食らったこともありました。そのような経験を積み重ねてきたことで、「一流の人達と付き合うことが大事だ」という美川さんの言葉が身にしみて理解できました。今では初対面の人と会うと、部屋に入ってきた瞬間にオーラではないのですが、「過去にどのような人生を歩んできたのか」が後ろに映るような気がするほどです。ですから私は大体、第一印象の最初の10秒ほどで、その人がどんな人なのかを判断します。話していくうちにそれが狂うこともありますが、ほとんどの場合当たっていますね。

やはり横河電機で鍛えられたことが生きていらっしゃるのですね。

そうですね。「人を大切にしない企業は滅びる」ということをかなり若いころから刷り込まれました。しかし、その頃はまだ「人を大切にする」ことの本質はわかっていなかったように思います。自分で会社を経営していく中で多くの失敗をして、さまざまな人たちと会って経験を積んできた過程を経て、「人が大事だ」と初めて腹に落ちました。売上や利益を上げるためには良い付き合いが大前提です。ですから嘘をついたり、裏切ったり、約束を破ったりしていたらダメなのです。先ほど「人間力」という言葉を使いましたが、その部分がなかったら成功は難しいでしょう。

やはり「人間力」というキーワードは欠かせないのですね。10年後金川社長はほぼ60歳ですね。差し支えなければ10年後の個人的な目標や会社のビジョンをお聞かせいただけますでしょうか。

今はとにかく良い仲間と良い仕事をしたいと思っています。先日早稲田大学野球部の斎藤 佑樹選手が「齋藤は何か持っていると言われますが、持っている物がわかりました。それは仲間です。」と言っていました。私もその言葉に共感します。たとえば仕事上は上司と部下の関係でも、その鎧を解いてしまえば一人の人間です。私が社長という立場を降りても、「一緒に何かしよう」と誘われるような男でありたいと強く思っています。「仕事をこうやってやれ」と指示して実行してくれるのは、社長という役職があるからですが、「一緒に何かしよう」と言ったときに人が集まるには、「あの人とやっていると楽しい」「あの人とやっていると勇気づけられる」と思われなくてはなりません。 先ほどお話に出た美川さんという方は、まさに会うと元気をくれる方でした。たとえば、会社の経営状態が悪く、組織運営もうまくいっていないという経営報告をしても、「ところでお前は元気なのか」「それならいい。じゃあ元気にがんばれ」とそれだけしか言わないのです。また私が周りに責められた時期には「お前、“出る杭は打たれる”という言葉を知っているか」と聞かれました。「もちろん知っていますよ」と答えると、「お前の杭は中途半端にしか出ていないから周りに打たれるのだ。届かないところまでいけば誰も打てない。遠慮しないでもっと嫌われるぐらいにやってみろ」とアドバイスをいただきました。美川さんは話していると「やはりこの人はすごい力を持っているな」と元気になります。話していて楽しいですし、怒られていても面白いのです。私の周りでも美川さんに怒鳴られたり怒られたりしても、みんな結構サバサバして戻ってきていました。怒られて怨んだり辛くなったりするのではなく、嬉しくなるのです。これこそまさに人徳でしょう。そのような人間的に魅力的な人になることが私の目標です。
また、会社のビジョン達成の観点から言うと、後継者の育成が課題だと思っています。そこで当社ではこの下期から「ヤングボード」という取り組みをスタートさせます。「経営を勉強したい」という社内の30~40代前半までの社員を集めて、私が直接講師をして教えていこうと思っています。

やはり意図的に修羅場を作り、経験させてあげることも必要なのでしょうね。

後継者育成も含めて、社長業を経験することはとても勉強になります。自分の経験がベースになりますが、「自分で飯を食う」ことを経験し、トライアンドエラーを繰り返すことが一番成長につながると思っています。

金川社長は会社を「家族」だと表現していらっしゃいますが、その家長になる人材はやはり苦しい道を進むわけですね。その一方でそうではない社員も全員大切にしてバランスをとられていることがお話を伺っていてよくわかりました。本日は貴重なお話をありがとうございました。

社長ブログ
http://blog.goo.ne.jp/ykinsan

CompanyData

キューアンドエー株式会社

■会社名:キューアンドエー株式会社
■代表者:代表取締役社長 金川裕一
■設 立:1997年7月1日
     ※2001年4月1日 株式会社キューアンドエーより商号変更
     ※2006年2月1日 横河キューアンドエー株式会社より商号変更
■所在地:東京都渋谷区渋谷 2-12-24 東建・長井ビル
■URL:http://www.qac.jp/
■事業内容 :
 ・訪問サポートサービス
 ・サポートセンターサービス
 ・マーケティングサポートサービス