経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.028 キューアンドエー株式会社(金川裕一 氏)

キューアンドエー株式会社(金川裕一 氏)

パソコンやインターネット、デジタル機器などの利用、活用に関するサポートサービスの専門ベンダーとして年々売上を伸ばしているキューアンドエー株式会社。今回は同社代表取締役社長 金川 裕一 氏に人材に対する考え方について伺いました。

樋口:
御社は新卒採用を実施されていますが、学生を採用されるときに金川さんが最もこだわっていらっしゃるのはどういったところですか?

金川
終身雇用、長期雇用の考え方は一般的とは言えなくなってきましたが、私は出来るだけ長く会社に勤めてもらいたいと思っています。ですから、1つのことに対してしっかり腰を据えて継続できる能力を持っているかどうかを重視しています。ですから面接では、「これまでの人生の中で、何か継続して取り組んできたものはありますか」という質問を必ずしています。アルバイトやスポーツ、文化活動でも何でもよいので、自分で自信を持てるものがあり、そしてそれを明快に説明できることが大切だと考えています。そうした人材であれば、それを仕事に置き換えて取り組むことができるはずですから。

金川さんご自身もバレーボールを長く続けてこられていますよね。同じ「続けてきた」という事実でも、その中身は人によって異なると思いますが、金川社長は「継続してきたこと」自体を大切にされているのでしょうか。

その通りです。たとえばバレーボールですとレギュラーになれるのはたったの6名しかいません。高校でも大学でも部員数はもちろんそれ以上いるのが一般的ですが、その中でレギュラーになれる人というのは、そのうちのほんの一握りでしかありません。とはいえ、実際にはその一握りの人材が全てではなく、部活動を運営するにしても練習するにしても、レギュラー以外に縁の下の力持ちになってくれる人達の存在が不可欠です。そして、それは会社でも同じです。最終的にトップに立てる(社長になる)のは1人しかいませんが、さまざまな人たちがそれぞれの役割を果たしてくれることで、組織というものが成り立つわけです。ところがレギュラーや高いポジションに就けず、自分が陽の目を見られないという理由で継続を諦めてしまう人が多いのもまた事実です。ですからそういう意味で、結果はどうであれ、組織の中で一緒になって汗を流して継続していくことは必要だと考えています。
同時に、組織としてはそのような「縁の下の力持ち」的な役割を担ってくれる人たちにも、上の立場にいる人が意識して言葉をかけるべきだと私は考えています。学生時代、私自身はずっとレギュラーを務めていましたが、大学3年生の時に病気をして、1年間プレーできない時期がありました。それまでは「レギュラーが偉い」という気持ちしかもっていませんでしたが、自分が球拾いばかりの日々を経験して初めて、「球拾いをしても相手からは感謝の言葉もない。これでは球拾いをしていても浮かばれないな」と強く感じました。当時“一隅を照らす人こそが国の宝だ”という意味の「照于一隅此則国宝」(※最澄 実際には照千一隅とする解釈もある。)という言葉をある人から教えてもらったこともあり、4年生のときにキャプテンを務めた際には、部全体で先輩後輩関わらず、球を拾ってもらったら感謝の気持ちを言葉にするように徹底しました。

「継続性」の他に何か重視されている要素はありますか。

私は「人間力」が将来性を大きく左右すると思っています。たとえば身体能力が高く技術があってレギュラーであっても、真面目さや熱心さがなかったり、行動が伴わなければある時点から成長は止まってしまいます。ですから、苦労して人の痛みもわかりながら自分でレギュラーのポジションを勝ち取った人、またレギュラーにはなれなかったものの真面目に一生懸命に続けることが一番大切だとわかっている人であれば活躍が期待できると思っています。つまり、自分の置かれた立場、環境で常にベストを尽くし、自分の役割を果たすことができる人材です。
20歳代に培った私自身の素養のベースは、真面目さ、熱心さだと思っています。これまで社内外を問わず優秀な人材を大勢見てきましたが、その中で共通していたのは継続的かつ徹底的に力を注ぎこむ集中力です。たとえば現 中日ドラゴンズ監督の落合 博満 氏が37歳の時、ある選手が31歳で引退する際に「なんでお前が引退して、自分がまだ野球選手として活躍しているのかがわかるか。それは俺が人の見ていないところで絶えずバットを振っていたからだ。お前はそれほどの努力を継続してきたか」と言われたそうです。やはりプロの世界では継続力、集中力が必要なのです。それは仕事でも同じです。

集中力や継続性というのは社会人になってからでも鍛えられるものなのでしょうか。

私は鍛えられました。横河電機に在籍中、労働組合への在籍専従を5年ほどしていたのですが、当時は同じ仲間と夜遅くまで徹底的に仕事をしなければならない環境でしたので、特に集中力は鍛えられました。

どのような場面で集中力が鍛えられたのでしょうか。

たとえば当時、会社側との会議でのやり取りは一言一句全てメモを取るように言われていました。それも1回の会議で大学ノートを使いきってしまうほどの量です。それが終了すると、今度は翌朝までにそのメモをもとに新聞記事を書かなければなりません。そのために今度は編集作業に突入します。私は書記長という立場で、でき上がった原稿をチェックしなければいけませんでしたので、結局毎回徹夜仕事になってしまいます。そうして完成した新聞を翌朝7時から会社の門の前で社員に配るのです。この一連の作業が終わるたびにふらふらになっていました。「こんなことを続けていたら倒れてしまう」と言いながらも続けていました。こうした経験を通じて、与えられた仕事に対して真面目に「今やらなくてはいけない」と思う気持ちと、「ここで徹底的にやる」という追い込む力を身につけることができました。