来店型保険ショップのパイオニアである株式会社ライフプラザホールディングス。保険代理店業界のリーディングカンパニーである同社人事部長 新家 康之 氏にこれまでの保険会社とは大きく異なる人事マネジメント法について伺いました。
樋口:
まず人事のお話に入る前に御社のビジネス概要についてお聞かせいただけますでしょうか。
新家:
私どもの会社は来店型保険ショップを中心としたいわゆる保険代理店事業を営んでいます。2000年に代表の今野(代表取締役社長 今野則夫氏)がお客様に「最高のサービス」を提供したいとの想いから日本で初めて来店型保険ショップの展開を始めました。保険というものはもともとはプッシュセールスが一般的で、どちらかと言えば商品を理解し納得して契約すると言うよりも、営業担当者の押しの強さで契約をしてしまうというイメージの強い業界でした。しかしそれは買う側、売る側の双方にとって必ずしも幸せではない状態を生み出していました。それを打破するために考えたのが、店舗型の保険販売という手法だったのです。しかし保険業界の中でも「成功するわけがない」との声が多かったのも事実です。正直に申し上げますと、当初は苦労も多く、閑古鳥が鳴いていた時期もありました。しかし、お客様のニーズが「保険も自分にあったものを選びたい」という方向へ変わってきたこともあり、現在では全国約160店舗以上、年間約50,000人以上(2010年5月現在)のお客様にご利用いただくにまで成長することができました。当社では「商品ありきではなくライフプランありきの提案」「より多くの保険の中からよりよいものを選んでいただきたい」「保険を理解し納得して加入する」という考えを大切にしておりますので、営業担当には商品を売ることよりも、ライフパートナーとして来店されるお客様の満足とご家族の幸せを追求し、コンサルティングをするよう教育を徹底しています。
エンドユーザーベースのサービスで、時代の追い風を受けて成長していらっしゃるのですね。ところで保険業界というと定着率が低いイメージがあるのですが、御社ではそうでもないようですね。
当社はまだまだベンチャー企業ですので、大企業のように福利厚生が整っているわけではありません。しかし、今まであった「保険会社を辞める理由」を一つ一つつぶしてきたことが大きいのだと思います。保険会社に人が定着しない最も大きな要因は新規開拓やノルマです。実は新規開拓を得意とする人材というのはごく一部にしかすぎず、その実態は先天的な能力に依るところが大きいのです。もちろんこうした一部のセールスパーソンは保険業界において大成功を収めていますし、誇りを持ってお仕事をされている方もたくさんいらっしゃいます。しかしその一方で、多くの方が継続できずに離職してしまうというのもまた事実なのです。現在は企業のセキュリティー意識が高まり、職場訪問自体の難易度も格段に高まっており、また個人のお客様の契約を取ると言っても、友達や親戚に協力してもらうにも限界がありますので、新規営業で成果を上げることは更に難しくなっているのです。それに対して、当社の場合はお客様自らが店舗に来店していただけますので、無理な新規開拓がありません。またノルマもありません。それは裏を返せば、頑張った人には会社として還元する仕組みがあるということです。同じ保険業界でも他社とは仕事内容が全く異なりますので、結果として報酬が高くなる方も多いですし、それにより向上心が高まって更に頑張ろうという意欲を持てる人が多いのではないかと思います。
また定着率が高いもう一つの要因として、働くことの喜びを提供できているということがとても大きいと思います。当社では押し売りではなく、お客様一人一人に合った保険をご提供することを大切にしておりますので、契約が成立したお客様から「ありがとう」と感謝の言葉をかけていただける機会が多いのです。人間誰しも人の役に立ったり、人から必要とされていると実感できればモチベーションが高まりますよね。また一度やりがいを感じると更に自分を高めようと努力しますし、こうしたことを続けることで経験値も上がります。はじめから全て意図したものではなかったにしろ、辞める理由を一つ一つつぶしていくことで、仕事に対する満足度が高まり、社員の中に「転職する」という選択肢が少なくなっているのではないでしょうか。やはりやりがいを持って活躍している社員は輝いて見えますし、そのような人を見て新たに入社した人材も頑張りますから。
良い循環が自然とできるようになっているのですね。