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株式会社サイバーエージェント(曽山哲人 氏)

樋口:
研修では実際にどのようなことをされているのでしょうか。

曽山
たとえば目先の目標と本人のやりたいことの両方を聞いて高い次元で結び付けるといった基本的なことから伝えています。実は私自身は営業時代にものすごい「詰めマネージャー」でした。今でも詰めの怖さが伝説に残っているくらいです(笑)。 典型的なA型神経質タイプなので、「なんでできないの?」「なんで?」「なんで?」とずっと詰問してしまうのです。それがある時、当時の人事の勧めでコーチング研修に参加したことで大きく変わりました。そこで自分が「動け」といっただけでは相手は動かないということを目の当たりにし、自分で決めないと人は動かないということをはじめて学んだのです。研修で学んだことは早速その日から実践しました。はじめは命令ばかりの私が質問ばかりになったので、周りのメンバーからびっくりされましたが(笑)。その効果もあってか会話に笑いが出るようになりました。さらにそれまで私が詰め続けても毎日のようにトラブルを起こしていたメンバーが、翌月ガラっと変わってMVPをとったのです。

人を動かすという意味での成功体験だったのですね。お話は変わってしまいますがご自身の著書「サイバーエージェント流 成長するしかけ」(日本実業出版社) の中で「挑戦と安心」の両方を大切にしているというのを拝見しました。曽山さんがお考えになる「安心できる状態」というのはどのようなものなのでしょうか。

仕事への集中を妨げるストレスがない状態をイメージしています。具体的には家賃補助「2駅ルール」や勤続年数による長期休暇の付与「休んでファイブ」、育児中の女性社員に対するフォロー「育児相談窓口」「パパママ懇親会」などをおこなっています。また、インフルエンザの予防接種の費用負担も安心のための取り組みの一つとしておこなっています。予防接種をすることでインフルエンザ感染に対する不安がなくなれば、本人もつらい思いをすることはなく、結果的に会社を休まないですみますので、仕事の時間が安定的に増えます。結局のところ、会社の業績は社員がどれだけ密に仕事に時間を費やせるかが生命線となります。こうした安心への取り組みの根底には、経営成果に対する邪魔者を取り除くために個人の不安を取り除くという意図があります。ただし、安心のことばかりを考えるとたまに個人のわがままにも見えるアイデアが出てくることもあるのですが、これをわがままととるかどうかは経営の成果につながるかどうかで判断しています。

非常に分かりやすいですね。
御社の人事マネージャーのポジションは経営に直結しているのでかなり重要度が高いと思いますが、曽山さんが次のポジションに移られることがあって後任を選ぶとしたらどのような人材を選ぶでしょうか。

まず現場感に向き合える人材です。加えて当社の人事のミッションである「コミュニケーションエンジン」、つまり経営の声を現場に伝え、現場の声を経営に伝える役割を担える人材ですね。この役割はただそのまま声を伝えるのではありません。生の声をそのまま伝えてしまうとしらけてしまうことがありますので、それぞれの本質を見抜いて相手が受け止められるようにしっかり翻訳することが必要です。やはり社員のモチベーションが10%上がると業績も10%上がりますし、経営の成果にものすごく強く影響しますからね。

モチベーションは定期的に測定されているのですか。

Great Place to Work® Institute, Incがおこなっている「働きがいのある会社」の調査は毎年実施していますので参考にはしています。後はよく現場の社員と飲みに行っています。

先ほどマネージャー研修のお話の際にも飲み会の話が出てきましたが、よく現場の方と飲みに行かれるのですね。

それだけの成果があると思っていますから。飲みに行くと立ち話では拾えないしらけ要素が拾えたりします。ただし、これができるのは今の年齢のなせる技なのかもしれません。ですから私が50歳になった時にはやはり違う運営スタイルになるはずですし、その時なりのやり方を作ることが大切だと思っています。

御社の人事の強さは経営に直結しており、事業環境や社員に合わせて柔軟に変化するところなのでしょうね。

やはり改善が前提です。事業環境が変われば当然やることも変わりますので、人事制度は作りこみすぎないと決めています。

まったく同感です。実際にはなかなかそれができない会社が多いのですけれどね。

「それってサイバーエージェントだからできるんでしょ?」と言われてしまい、そこで話が終わってしまうこともあるのですが、大切なことは経営成果への貢献という軸で判断することだと考えています。

人事施策のネーミングだけを伺うと特殊な人事施策だと思ってしまいがちですが、理念、事業戦略に沿ってよく考え抜かれているのですよね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

著書紹介一覧はこちら
サイバーエージェント流 成長するしかけ

ブログ
http://ameblo.jp/dekitan/

 

CompanyData

株式会社サイバーエージェント

■会社名:株式会社サイバーエージェント
■代表者:代表取締役社長CEO藤田 晋
■設 立:1998年3月18日
■所在地:東京都渋谷区道玄坂一丁目12番1号渋谷マークシティ ウエスト21階
■URL:http://www.cyberagent.co.jp/
■事業内容 :
 1. Ameba関連事業
 2. インターネットメディア事業
 3. インターネット広告代理事業
 4. 投資育成事業