経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.020 株式会社デジタル・インフォ・プロデュース(岡田泰幸 氏)

株式会社デジタル・インフォ・プロデュース(岡田泰幸 氏)

樋口:
自責で考えられる人材は入社後の成長度合いも高いのではないかと思いますが、本人の成長には入社後の育成よりも採用時の見極めの方が影響が大きいとお考えですか。

岡田
その比率は半々ぐらいだと思います。自責で考えられる人材は環境さえ与えてあげれば、自分で考えて行動するのでどんどん成長していきます。逆に細かな制度が行き届いている企業や指示に沿って動かなくてはならない企業では、もともと自分で考えて動ける人材であっても、結果的に行動を制約してしまうことになりがちです。ですから、自責で考えることができる人材は過保護に教育するべきではなく、自分で考えさせたり、あるいはそれを行動に移せる環境を会社として用意してあげることが大事です。このような環境を研修プログラムやOJTを通じてどのように作り出してあげるかということが、人材育成で重要な要素だと思っております。

私も最初の上司や先輩はその後の成長を考えると非常に大事だなと実感しています。「自責前進」の必要性は岡田社長がサラリーマン時代からお考えになっていたことなのでしょうか。

どちらかと言えば、経営をはじめてからの方が強く感じています。当時IBM出身で一から起業している人間はほとんどいませんでしたし、私自身若くして会社を立ち上げましたので、企業経営というのははじめての経験の連続でした。そのような中で「知らないからできません」という理論は通用しないわけです。世の中では相対的に物事が進んでいきます。為替や株価と同じですが、常に右肩上がりというような理想的なことはなく、後退することも踊り場の状態もあります。しかしどのような状況であれ、前に向かって進み続けなくてはどうにもならない、ということを自ら経営することを通じて学びました。また歩みを進める中ではじめて経験することや知らないことに出会うのは当たり前であり、たとえそれにぶつかったとしても自分なりに勉強したり教えてもらったりしながら、何とか対処し物事を前に進めるようにしなければいけません。もし私がサラリーマンを続けていたらこのような考えには至らなかったでしょう。もちろん大企業の社内にいたら、また違った経験ができていたのだろうとは思いますが。

「自責」やその反対の意味の「他責」という言葉は弊社内でもよく使います。自責で考えることができなくなると、単なる批判に走ってしまったり逃げてしまうことに繋がります。そういう意味で自責というのはベーシックですけど、大事な考えですよね。

人間にはもともと自己防衛本能がありますので、結果的にどうしても他責にしてしまいがちです。たとえば景気が悪い中でうまくビジネスが進まなければ「景気が悪いから仕方がない」と考えてしまうこともその一例です。しかし仕方がないと言って他責にしたところで何も良い結果を生み出しません。会社であれば仕事がなければ倒産してしまいますし、個人であれば仕事がなければ生活のための収入すら得られなくなってしまいますから。

おっしゃる通りです。こういう時代にこそ他責ではなく自責で物事を考えられる人材が必要ですし、この考えが浸透している集団は強いですよね。御社では社員の方にどれくらい「自責前進」の考えが浸透しているのでしょうか。

経営幹部やその他のコアとなるメンバーには、十分浸透しています。たとえば今回、東京都のワークライフバランス認定企業となったもその「自責前進」の浸透が形になった結果だと考えています。これは社員のボトムアップから出てきたもので、企画からその実行、認定に至るまで全てのステップを責任を持っておこなってくれました。

それだけ理念を共有されるためには何か工夫をされていらっしゃるのでしょうか。

コミュニケーションを非常に重要視しています。一口にコミュニケーションと言っても、種類は色々あります。全社に向けて発信したい場合には、全体会議をおこなうこともありますし、日常的に実施する打ち合わせも当然あります。また、夜にお酒を飲みながらする会話も本音を聞き出す良い機会です。主に時間を割くのはこのようなフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションですが、それを補完するためにメールやSNS等の仕組みもうまく使うようにしています。しかし実際には、私自身が一人一人の社員に接する機会には限界がありますから、営業会議やプロジェクト・リーダーの会議等を通じて幹部からメンバーに伝えていくという手段もうまく組み合わせるようにしています。

岡田社長自身は勤務時間のうち、どの程度の時間をコミュニケーション活動に使われているのでしょうか。

月によって状況が異なりますので、一概には言えませんが、メールのやり取りなども含めて大体3割~4割ぐらいにはなるのではないかと思います。

すごく重点を置いて取り組んでいらっしゃるのですね。

それはコミュニケーションによって会社の状況が大きく左右されると考えているからです。コミュニケーションがあるからこそ、個々の社員のベクトルを揃えることが出来ますし、人が集まることによって得られるアイディアや気付きも多くあります。そのためコミュニケーションは非常に重視しているのです。