経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.065 株式会社アトラエ 代表取締役(新居 佳英氏)

Pay For Contribution ―縁の下の力持ちも評価される会社に  株式会社アトラエ 代表取締役(新居 佳英氏)

利用企業5000社を超える採用サービスを展開する株式会社アトラエ(以下、アトラエ)の代表取締役を務める新居佳英氏。1998年に大学を卒業後、当時未上場のベンチャー企業であった株式会社インテリジェンスに新卒で入社し、わずか3年で同社の子会社の代表を務めた経歴を持つ。異例の速さでアトラエを上場企業へと導き、現在も自らが経営者として最先端でビジョンを追い続ける新居氏に、会社の成長と社員の幸せの関係性や、アトラエ独自の評価制度、会社を牽引するリーダー像などについてお考えを伺いました。

きっかけは学生時代。 “わくわくする”ビジネスをやりたい。

【経営に興味を持ったきっかけについて】

樋口:新居さんのブログやインタビュー記事などで、就職活動にはあまりわくわくしなかったという内容を拝見しましたが、学生時代からビジネスに興味があったのですか。

新居: 実は、学生時代に少しだけビジネスをやっていました。当時、時給で働くアルバイトはあまり性に合わず、 もっと効率よく楽しくお金を稼ぐ方法はないだろうかと考えて、仲間うちでビジネスをやってみようということになりました。関わった皆さんに喜んでいただけて、その分の対価をいただける。その頃からビジネスは面白いと感じていました。

樋口:そういった経験をすると、サラリーマンになろうとは思わないでしょうね。

新居:そうですね。あまりサラリーマンには興味がなかったと思いますが、とにかく仲間とわくわくすることをやりたいという想いが強かったので、社長になることにこだわっていたわけでもありません。ただ、就職活動を通じてこの価値観を共有できる仲間と巡り合えそうな感覚がなく、自分でチームを立ち上げた方がやりたいことを実現できる気がしました。

樋口:それでも、最初の就職にインテリジェンスを選んだ理由を教えてください。

新居:はい。会社を立ち上げるには、それなりの資本金も必要でしたし、法人登記も簡単ではありませんでした。まずはどこかで経験を積む必要があると考え、最短で起業できる環境がある会社を探しました。まずは、自分で起業した経験を持つ経営者であり、比較的若くて距離が近いこと。何かあれば直接経営者とディスカッションできるような風通しの良いカルチャーがある会社で経営を学びたいと考えました。加えて、やる気があれば年次に関係なく仕事を任せてもらえる環境であること。そして、仲間のレベルが高いこと。インテリジェンスの社員には大手企業の内定を辞退して入社した者や、とがった人間が多く、面白い環境で経験を積むことができました。

経営者の成功の定義は、ステークホルダーの幸せをいかに高められるか

【経営で大切にしていることについて】

樋口:収益を上げて会社が成長すること、社員が成長すること、バランスが必要だと考えています。貴社はその中でも、特に社員にフォーカスしているようにみえますが、優先順位などについてお考えがあれば教えて下さい。

新居: 自己流な考え方ではありますが、まずひとつ経営者の成功の定義、経営者が目指すべきものは「ステークホルダーの幸せ」であると考えています。ステークホルダーとは、社員、顧客、そして株主を指します。その中でも、スタートはやはり社員からであると考えています。これは、どちらの優先順位が高いかということではありません。顧客に価値を届けるのは社員なので、その社員がいきいきと働けていない状態で良い価値を提供できるとは思えないということです。ですから、まずは社員がいきいきとやりがいを持って働くこと、誇りを持って意欲的に働くことが絶対条件だろうと思います。そうすれば、良いプロダクトやサービスが生まれ、それを顧客に提供すれば対価が支払われ利益が出る。その利益を株主に還元し社員に分配すれば、社員はやりがいを感じ、さらに意欲的にいきいきと働くことができる。優先順位というよりも、社員を起点として、このサイクルを回していくことが重要であると考えています。

樋口:ありがとうございます。全く同感です。いまのお考えは、学生時代からのものですか。

新居:そうですね。根本的な思想は変わっていません。学生時代には知識がなかったので、ここまで整理して人に伝えることはできていませんでしたが、働く自分たち、仲間が幸せにならなければ意味がないのではないかというのはよく感じていました。また、いくら儲かっても顧客に本当に良い価値を提供できていなければ楽しくないと考えていました。ですから、根本的には学生時代からずっと変わっていないですね。


あらゆる社員がやりがいを感じながら人生を歩める会社に

【社員の幸せ観について】

樋口:社員の幸せ観が多様化している時代だと思います。私自身、最近、20年近く勤めてくれた40代以上の社員の幸せを考えて悩ましく思っているのですが、新居さんは幸せ観について悩まれることはありますか。

新居: 私はあまりないですね。ワークライフバランスもそこまで意識してはいません。この会社自体は、世界中の人々を魅了する会社を創るということを目標にやっているので、採用時点でこれに共感できない人は採用しないと決めています。ですから、社員はこの目標にチャレンジし続けること、それがやりがいであることが前提であると考えています。ただ、その中で、働き方にはかなり多様性を持たせています。時短勤務、在宅勤務等、そのすべてを許容しています。家庭、プライベートのフェーズによって、頑張って働いていた時期もあれば、少し時間を短縮して効率よく働かなければならない時期も当然ありますので、それはどのような形でも良いと考えています。あらゆる人が、長期に渡っていきいきとやりがいを感じながら人生を歩んでいけるような会社にしたいと思っているので、幸せの定義を何かひとつに定めてはいないですね。

樋口:いまのお話を伺って、新居さんがただ給料を稼ぐという意味でのサラリーマンになることに抵抗を抱いていたように、社員の皆さんに対してもただのサラリーマンになってほしくないとお考えになっているように感じました。

新居:まさにおっしゃる通りです。アトラエで働く社員がサラリーマンにはならないという会社をつくっているつもりです。例えば自分の子どもがいつか就職するときに、これは良い会社だと胸を張って薦められるような、心から良いと思える会社にしたいですね。