経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.063 一般社団法人日本ラグビー選手会 会長(廣瀬 俊朗氏)|

自分なりの志を持つキャプテンこそがチームを内部から強くする  一般社団法人日本ラグビー選手会 会長(廣瀬 俊朗氏)

「ともに日本代表チームを作り上げてほしい」と、エディー・ジョーンズヘッドコーチからラグビー日本代表の主将に任命され、2015年のワールドカップメンバーにも選出された、一般社団法人日本ラグビー選手会 会長を務める廣瀬 俊朗氏。過去24年間ワールドカップで一度も勝てなかった日本代表チームを内部から強化してきたご経験について伺いました。

日本らしさを弱みから強みに転換させた、マインドセット

樋口:【ラグビー日本代表が強くなった最大の要因とは】
近年ラグビーで日本代表の良い試合が見られるようになってきました。テクニカルやメンタルなど、いろんな要因があると思いますが、強化された理由はどのようにお考えでしょうか。

廣瀬: エディーさんが来て、僕たちに「日本人ならではの強さがある」と良い所を提示してくれました。それだけでなく他にも色々と「お前らも勝てる可能性がある」ということを具体的に教えてくれて、実際に試合に勝っていきました。「できるんじゃないか」という心構えのところを変えてくれたことがまず大きいです。エディーさんは世界で活躍しているコーチとして実績もありましたし、指導には説得力がありました。


勝つためにやっているのではない、日本ラグビーを変えるために勝たなければいけない

樋口:【なぜ厳しいトレーニングに耐えられたのか】
負けるものだと思っていたところから、やはりリーダーが変えていったのですね。では、練習が大変ハードな中で、あれだけのメンバーが長期間どうやってモチベーションを維持したのでしょうか。高校生や大学生ではなく大人が耐えられるイメージがわかなくて、「よく我慢したな」と思うのですが。

廣瀬: みんな「日本ラグビーを変えたい」という思いがあって、それにはエディーさんについて行くしかなかったからです。エディーさんが入ってから、みんなで「何のために練習しているのか」という振り返りや話し合いを意図してやってきましたし、常々「日本ラグビーを変える」と口に出し合っていました。勝つためにやっているのではなく、日本ラグビーを変えるために勝たなければいけない、という気持ちでやっていました。ただ、昨年度は168日もの合宿があり、精神状況は良好ではなかったです。僕も閉所恐怖症になり、飛行機に乗るのが怖くなって苦しくなった時期がありました。他のメンバーもかなり追い込まれていました。その部分については、仲間に支えられて乗り越えられた部分がものすごく大きいです。

チームメンバーの意見から問題解決のヒントを得る

樋口:【一枚岩となるための、チーム内でのコミュニケーション】
「日本ラグビーを変える」というのはスローガンみたいなものだったのですね。日頃、メンバーにはどのように声を掛けていたのかを教えていただけますか。

廣瀬: 自分の知恵なんて大したことはないと思っています。ですので、色んな人にいろんなことを聞いて、本当にいいなあと思ったことをちょっとずつやっていくという感じです。みんなチームのことが大好きだから、どんなことを相談してもその人なりにちゃんと答えを持ってくれています。うまくいっていない時であっても、すごく良いことを教えてくれます。僕はキャプテンとしての視点しかない中で、彼らはいち選手としての視点を持っているので。何か一つが良くなれば、それをきっかけとして組織全体が良くなるということもありました。