樋口：
それは澤田さんにとって楽しい仕事なのでしょうか。人が絡むと良い事も嫌な事もあるじゃないですか。面倒くさくないですか。

澤田：
すごく楽しいですね。全然面倒くさくないです。もちろん嫌なことは起こります。でもそれが明確になる事はお互いにとってすごく大事じゃないですか。それはすごくありがたいことです。私も全然完璧な人間ではありませんので、すべては勉強だと思っていますし、全部教えていただくという立場に立ってやらなければいけないと思っています。

なるほど。今の御社を人の面で見ると、澤田さん理想を100点とした場合、何点くらいなのでしょうか。

人の面では100点に近いと思います。本当にいい仲間が集まってくれていて理想の人たちと仕事をさせていただいています。彼らが一緒に仕事をしてくれている、頑張ってくれているということに関してとても感謝していますから、私にとっては100点です。ただし彼らがどこまで頑張れるかというのは、私も含めてこれから努力しなければなりません。まだ、経営面では10点ぐらいしか取れていません。それは私のせいだと認識しています。

素晴らしいですね。ところで御社では澤田さんに対して意見する方は多いのでしょうか。

今のところみんな意外と言うと思いますね。当社は飲み会が多いんですよ。世の中に逆行してやろうと思って。集中と選択ではなく、分散と多角化、デジタルではなくアナログです。アナログ、ヒューマンリレーションシップ、飲み会、合宿。そちらのほうが私のやりたい事なので、よくやっています。

なるほど。最後に会社に対する考え方についてお伺いしたいです。私自身は会社の成果というのは自分の能力を超えないな、ということをずっと感じ続けています。以前本インタビューに登場していただいた株式会社経営共創基盤の冨山 和彦さんはそれをオーナー経営者の煩悩だとおっしゃっていました。澤田さんは、今の話を伺っている限りそういう状態ではなさそうだな、と思うのですが、自分の能力を超えるような会社に成長させたいとお考えですか。

人間１人の能力なんて本当に薄っぺらなものだと思っていますし、自分自身も大した能力がある人間だとは全く思っていません。世の中には自分よりも本当に全然優秀な人がいっぱいいると思っています。ですから、自分の器を超えるかどうかではなく、その人たちが我々のミッションやビジョンを理解した上で本当にハッピーに働いてくれるか、その環境を我々が提供できているかということに尽きるのではないでしょうか。それができていれば、仲間はものすごく頑張って、努力してくれると思うのです。それはどんどん伝播すると思いますし。ですから、自分よりも能力の高い人間がこの会社に入ってくれて楽しく働くことを、いかに継続してできるかが私にとっては重要なのです。

ありがとうございます。愚問かもしれませんが、もし澤田さんが退陣されることになった場合、どのような人に社長を任せたいと思いますか。

私は全然こだわりはないです。私がやっている限りにおいては、社員にこうなってほしい、という想いはありますが、もし自分が退散することになったら、後任となる方がやりたいようにやるのが良いのではないでしょうか。興味はありますが、引かざるを得ない人間がとやかく言うとおかしくなってしまいます。そこにいる人がやりたいようにやるのが組織のあるべき姿だと思いますし、そこに口出しはしたくないのです。本人に対しても失礼ですよ。

澤田さんご自身がやりたいことをやるように、まわりにもその環境を提供されるのですね。

そのように意識してきたつもりですし、そうでなければかわいそうだと思います。子どももそうですが、好きにやらせたいですね。好きにやっている時は皆きらきらしていますから、それがあるべき姿なのだと思いますし、その時に人間はやはり一番成長すると思います。「苦労は買ってでもしろ」みたいな言葉もありますが全然信じていません。苦労なんかしなくてもいいと思うのです。成長するために困難には立ち向かえばいいと思いますが、苦労である必要はありません。

澤田さんは「やりたいことをやる」、という一本筋の通ったお考えをお持ちですね。御社はそのやりたいことをやる場なのだ、ということが良く分かりました。澤田さんの一貫したお考えにエネルギーをいただきました。今日はありがとうございました。