経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.033 株式会社ノバレーゼ(渡瀬舞子氏)

心から相手に向き合うことは現場も人事も同じ 株式会社ノバレーゼ(渡瀬舞子氏)

樋口:
やはり、中規模の組織の採用では、迷わずに決断できる決断力が求める資質の一つになりますよね。当社は人事関係のコンサルティングをやっており、知的水準も大事にはするのですが、数字の感覚も見ています。社員には「お客様の満足度は数字である」という話し方をするのですが、そこについてこれるかどうかがすごく大事だと思っています。
先ほど、渡瀬さんから「現場時代は、数字にも追われました」という一言がありましたが、その範囲を抵抗なくくぐり抜けられるのは、どのような人材だとお考えですか。価値観や想いはすごく大事にしつつも、ビジネス現場の最前線にもきちんと向き合える人材にはとても興味があります。

渡瀬:
勝つことの喜びを知っている人が強いと思います。本気道7か条の「貫け」というところに繋がるのですが、部活動でも受験でも、勝つことの喜びや、それを乗り越えた時の楽しさを知っている人は、乗り越えられると思います。
入社したての純真無垢な状態ですと、ピュアな心の持ち主が多いので、「数字、数字」と言われることとお客様満足が上手に結び付かないものです。そういう時に、指針になるのが上司や先輩にあたるスタッフ達の姿です。お客様を愛していて、お客様から愛されていて、そんなにガツガツバリバリやっていないように見える人に限って蓋を開けてみると成績が断トツに良かったりするんですね。そういう姿を見せた上で、「まずお客様から信じてもらって、数字を上げてから文句を言いなさい」と指導するのです。本当に良いと思うものをご案内できていれば、数字に対する後ろめたさはないはずですから。

今数字を上げている先輩が、新入社員の鏡になっているのですね。 「勝つことの喜び」というお話がありましたが、いわゆるゆとり教育の導入以降、競争意識が非常に劣化しているように感じています。こういう状態で「勝った経験」を見るというのは、私もとても大切だと思います。逆にそのような経験がない人材に想いと数字のバランスを教えるのは大変だろうなとも思っています。

難しいと思います。当社でも新卒採用の場合、1度だけの面接では見抜けないので、複数回面談を繰り返します。決まりきった自己PR以外の話を聞き出すために、1人に対して、1時間程、多い学生では6回、少ない学生でも4回は面談しています。1問1答ではなく、対話の中で「勝った経験」を見つけていくのです。

定型的な面接ですと、作文したような内容しか聞けませんし、本当のことはわからないですよね。4回から6回面談されるということでしたが、私の知っている中小企業で採用が成功している企業の共通点は、面談の回数です。それは、本当にコストがかかりますし、途中で辞退されてしまうリスクもあるのですが、回数の多い企業は結果として採用ミスがとても少ないなぁと感じています。


採用チーム

新入社員が入社した後にギャップを感じるのは、学生が会社に対して持っている期待が大きいことが原因です。会社に期待することはいいことですが、「入社したら私もこうなれるかな」「入社すれば先輩のようになれるかな」という程度の期待では不十分なのです。自分で「自分の生きる道はここなんだ」と思えるところまで面談の中でしっかりと落とし込んだ上で、本人が決意して入社すれば、入社後のギャップは避けられると思います。そこまで意識の落とし込みができていれば、仮に思い描いていたことと会社の実情が違っていたとしても、そのギャップを自分で解決していけるようにもなります。理想や期待をそういう発想に変えていくことが会社を強くしていくと私は考えています。そのような意識を、入社前の面談の中で醸成していくことが、私達の採用において力を込めてやらなければいけない部分なのです。

お話を伺っていると、やはり採用の仕事は人を相手にしている点で現場の仕事に近いですよね。特に御社の場合はお客様とも、採用の候補者とも同じ目線で相手と対峙しているように思えます。やはり御社の採用は新卒採用が中心なのでしょうか。

もちろん、中途で採用した経験者の力なくしては、会社が階段を上るように成長してくることは実現しえなかったでしょう。しかし、会社の文化を強く浸透させていくという点では、新卒のパワーがもたらすものは大きいと感じています。