経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.060 Sansan株式会社(角川 素久 氏)

世の中の働き方を革新するために、自分たちの働き方も変えていく Sansan株式会社(角川 素久 氏)

採用基準は「ミッションに共感し続けることが出来るか」

樋口:
 続いて採用のことについて伺います。採用の基準として重要視されていることはありますか。

角川:
 Sansanのシンプルなミッションに強く共感し、それに集中できるか、ということですね。
 当社の事業は名刺管理一本で、これだけで世界で戦おうとしているわけですから、社員はこれに対してすごく早いスピードで高い目標を掲げてコミットしていくことが求められます。
 名刺を組織で管理するというSansanの価値は、まだまだ一般に十分な認知があるわけではなく、市場、もっというと「名刺は会社で共有するものという文化」を創っている段階です。すでに競合があって、そことの差別化を訴求する方がよほど簡単なのです。お客様のニーズが顕在化していない中で、その価値を信じていただき、かつ購入していただく、云わばリーダーシップが求められるわけです。その本質に集中できるかが重要です。
 私たちはよく船にたとえて、ミッションという一つの目的地に対し、乗りあった皆でそこを目指すという言い方をします。その中で一人ひとりが日々やっているのは、デッキブラシで床を磨いたり、食事の準備をしたりという地道なことなんですよね。これをやれるのは、目的地に行くことに強い共感があるからで、だからこそ価値観のマッチングはとても重要だと考えています。
 こだわりが強い分、採用はとても大変です。ただ、そのレベルは出来るだけ落としたくないですね。

 今お話された価値観のマッチングは、面接というコミュニケーションで実施されるのですか。

 そうですね。まず話をしますが、見極められなかったら何回でも色んな社員に会わせます。人が何か共感したり、何かを感じたりしていることは非常に測定しづらく難しいところですね。
 面接・面談以外であれば、感触の良い候補者に対して少し社内ツアーをしたり、当社が毎年発行しているイヤーブックという社内報を一年分渡して、写真と文章で当社のカルチャーや雰囲気を感じてもらえるよう工夫していますね。

 採用した中で格別貴社にフィットする人材とはどういう人でしょうか。

 Sansanのミッションとして私たちが考えている世界観に共感して皆入社してくるわけですが、はじめの温度感が継続する社員ほどフィットしているように思います。具体的には、日々の業務を自分ごととして捉え、ミッションに向かうために自分で戦略を考えたり改善したりできるタイプですね。

 優秀な人材を採用されているからこそ、社員の共感レベルを高く維持することは施策としても重要ですよね。その上で今取り組まれていることはありますか。

 やはり社員はミッションに共感しているわけですから、それを体現する社長がぶれないことがまず一番重要だと思います。社長だけでなく、私たち役員・部長クラスも温度感を減衰させず、「上の人たちは真剣なんだな」と思ってもらうことですね。
 幸い、私たちの社長はその点ぶれません。常にSansanのミッションを実現した世界と現実のギャップを埋めていくために行動しています。それは会社にコピー機があることが常識であるように、Sansanで名刺を共有することが当たり前になった世界です。そのために時にリスクを取った投資をし、時に社員が驚くような思い切った判断もします。一方で、ユーザ体験など細かいところも見ています。365日考えているからこそできることだと思いますし、まさに旗を掲げる「リーダー」なんですよね。このように、トップが現状に満足せずにチャレンジしている姿勢を見せ続けることが何よりも重要だと思います。