経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.053 株式会社アライブメディケア(竹内啓氏)

今後の事業を担うのは想いと合理性のバランスが取れる人材 株式会社アライブメディケア(竹内啓氏)

セコムグループの一員として「すべては最高のサービスのために」という理念のもと、介護付有料老人ホームを企画、運営している株式会社アライブメディケア。同社常務取締役 竹内 啓 氏に人材に対するこだわりについて伺いました。

実務経験のない人材はスタッフとしては採用しない

樋口:
介護付有料老人ホームの運営という業態で新卒採用に力を入れていらっしゃるのは非常に注目すべきことのように思います。私も何社か介護業界のお客様のお手伝いをしたことがありますが、新卒採用は難しいというお客様が多くいらっしゃいました。事業上の位置づけとしてどんなお考えで新卒採用されているのでしょうか。


ホーム外観

竹内:
他社様の採用について詳しく知っているわけではありませんが、介護業界の新卒採用の取り組みスタンスは大きく2つに分かれると思います。一つは余裕がないために取り組めない企業、もう一つは現場の人手の補充として新卒を採用している企業です。私どもの場合は1番目でも2番目でもありません。まだまだ道半ばではありますが、新卒で入社した方には今後の事業展開の中で一定の役割を担ってもらおうというのが根底にあります。

リーダー・幹部候補ということですね。

当社はまだ若い会社ですし、介護事業自体が若い産業です。ただし今後、市場全体のボリュームは間違いなく上がっていきます。なぜならば高齢化社会ですから。日本人の高齢化が進む中、西暦2000年に介護保険法が制定されました。これにより、介護保険報酬という事業としての大きな収益の柱が制度上作られたわけです。それに伴い、有料老人ホームはどんどん増えてきています。そういう成長性の高い事業展開をしていますから、今現場をどうやるかではなくて、もう少し長いスパンで事業の発展を考え、活力を維持していく必要があります。今はようやくアライブとしての事業の基盤がある程度できた状況です。これから今の基盤の上にどういうものをのせて事業展開していくか。5年先10年先を考えたときに、現場のご入居者へのサービスというミクロ的に必要なものと、事業全体をどのように発展させていくか、どのように現場のサービスを組織として最適化していくかといった両方の視点でのマネジメントが必要なのです。もちろん欠員があったときに現場の即戦力として実務経験がある方を採用することも必要です。しかし、果たしてそれだけで5年後10年後に事業を成長・発展させていくために必要な人材を会社として手当していけるんだろうかという問題があります。現場に必要なスタッフは介護のスキルがあって、サービスすることに信念・想いがあるというのが必要なんですが、そういう現場の世界でキッチリやっていける人と、全体を事業としてとらえて機能していける人とでは、ちょっと違うだろうと思うのです。もちろん中途採用でもそういう資質を持ってる人はいますし、今はなんとかできているという部分もありますが、今後の事業展開を考えるとそれだけではしんどい。ですから介護の現場でサービスを組織的に最適化するような役割を担ってくれる方、事業全体のコア人材を長期戦略で求めなくてはいけません。そうするとやはり新卒なのかなというのが新卒採用をおこなう根底にある考え方ですね。

中途採用と新卒採用は全く別物だとお考えなのですね。

基本的に現場の手の補充としては考えていません。介護業界はご存じのとおり、処遇がよろしくない、仕事が大変である、現場での精神的な負荷も実は少なからずあるといった理由で、なかなか人が定着しません。退職率も高く、常に人が足りない状態です。それを新卒採用で補充する企業もありますが、当社では現場の手の補充であれば新卒を採用する必要は全くないと考えています。私どもの介護付き有料老人ホームは一番高い価格帯に特化しているのがひとつの特徴です。端的に言ってしまうと、当社のホームのご入居者は回りのサポートがないと自立した生活が出来ない方です。例えば人間生きていくためにトイレに行かなくてはいけない、食事を摂らなくてはいけない、お風呂に入らなくてはいけない、あるいは移動するときにスタッフの助けがいる。もしスタッフの数が少ないと、こういう生活の基本的な部分をやるだけでも一杯一杯になってしまいがちです。基本的な生活はもちろん大切ですから、ビシッとしなくてはなりません。しかし、生活という視点で考えると、基本的な部分が大半になってしまうのは違うよね、というところにサービスの原点を求めています。ですから私どもの現場スタッフは、基本的なスキルと、ご入居者の生活をサポートしていくというある種の信念・想いというものが必要なんです。生活というものは必ずしも決まったパターンがあるわけではありませんし、方程式では表せない世界です。機械的に仕事をするだけではないとなると、実務経験の影響がかなり大きくなります。実務経験というスキルに想いをプラスして現場のサービスが成り立っているのです。ですから私どもは実務経験のない人材はスタッフとしては採用していません。業界全体的な人手不足の中で、そこまでこだわっているのは異色の存在だと思います。それなりに苦労もしますが、実務経験2年以上というのは外せない基準なのです。ちなみに現場スタッフは、常勤非常勤合わせて360名ぐらいですが現場で働いているスタッフは85、6%が女性です。