経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.029 株式会社KUURAKU GROUP(福原 裕一 氏)

株式会社KUURAKU GROUP(福原裕一 氏)

年間離職率が平均30%を超える外食業界にありながら、直近3期の離職率が平均14.6%を誇る株式会社KUURAKU GROUP。今回は「手を挙げた人、全員内定。」の著者としても知られる同社代表取締役社長の福原裕一 氏に、強い組織力を誇る同社の秘訣を伺いました。

樋口:
福原社長の著書「手を挙げた人、全員内定。」(東洋経済新報社)を拝読しました。手を挙げた人全員に内定を出すのはとてもチャレンジングなことだと思います。このような取り組みをされるのは御社が採用で決断力を重視されているからなのかな、と思ったのですがいかがでしょうか。

福原
この取り組みは、2008年度の新卒採用の際に実施しました。会社説明会の終わりに「一緒に働きたいと思った方は挙手してください」と参加者に投げかけたのです。思いがけないタイミングで入社意欲を聞かれた場合、考える間はありません。学生は直感に頼るしかないわけです。実際、そこで挙手した方は29名でしたが、全員に内定を出しました。このような取り組みに挑戦したのは、樋口さんがご指摘された通り、決断力や感性を大切にしたいと思っていることが一つの理由です。そしてもう一つには、人間には本来無限の可能性があるので、意志さえあれば入社後にどうにでも成長できるだろう、と考えているためです。この時に入社した人材は、通常の採用プロセスを経て入社した人材と変わらず活躍してくれています。ただし、こうしたやり方は1回でも実施してしまうと、他の応募者にもあっという間に知れ渡ってしまいます。そうすると感性を見ることができなくなるので、同じ方法を何度もすることができないのが難点です(笑)。

非常に興味深いお話です。決断力や感性さえがあれば、あとは入社後の育成次第だということですね。そのようにお考えになったきっかけがあったのでしょうか。

きっかけとなった出来事が2つあります。1つは前職(マクドナルド)での経験です。店舗で働いていた時に、アルバイト採用を担当していたことがあったのですが、ある時にどうしても人手が足りず、採用した高校一年生の男性がいました。実は通常であればお断りするレベルの方だったのですが、そんな彼が時間が経つにつれてできる仕事が増え、役割を与えるとどんどん自発的に仕事に取り組むようになっていったのです。出勤時間の一時間前に来て、自分の役割を全うしようと一生懸命に取り組んでいる彼の姿を見て、人の持つ可能性の大きさを実感しました。もちろん第一印象や考え方でも判断しますが、人はそれでだけは計り知れない可能性を持っているものであり、役割や機会を与えることによって成長するものだと身にしみて感じたのです。
もう一つは創業当初の失敗からです。当社は創業当初、中途採用を中心におこなっていました。この時期にはいずれ自分のお店を持つことを目指して入社される方が多く、当社としても経営者マインドを持っており、それにしたがって行動がとれる人物を採用したいと考えていました。ところが、そのような方々の多くは自己実現欲求ばかりが強く、当社の理念やビジョンを重視しない方が増えてしまったのです。その経験から、企業を存続させるには企業全体で何かを目指せる組織にしなければならない、そのためには考え方が近い人材を集めることが必要だという考えに至りました。そこから新卒で採用する方向に大きくシフトしていきました。思考力や論理力といった地頭の良さよりも、感性が豊かな人材を集めた方が私自身が作りたい会社像に近づくと考えたためです。

感性が豊かというのは具体的にはどのようなことなのでしょうか。

人の気持ちを感じる心や、生きていく上で幸せを感じられる心です。当社は外食産業で、サービスを提供していますから、感性が豊かでなければ力を発揮することが難しいのです。

可能性のとらえ方については私自身もよく悩みます。驚くような成長を遂げる人材がいる一方で、逆の場合もあったりします。福原社長は可能性を制限せずに、できるだけ前向きにとらえていくことが大切だとお考えなのですね。

そうですね。もちろん成長スピードが速い人もいれば遅い人もいたりと千差万別です。しかし人は必ず成長していきます。成長とはなだらかな曲線を描くものではなく、階段を登ることが必要です。つまり、その階段に出くわすタイミングや登り切るタイミングが人によって違うだけなのです。人は無限の可能性を持っているものであり、役割や機会さえ与えれば必ず成長の芽は出てくると信じることが大切だと私は思っています。

感性のほかに何か御社で重視されていることはありますか?

一番は「やり抜く力」です。昨今は社会構造もますます速いスピードで変化していますし、私たちがコントロールできない要因が世の中には多く存在します。ですので、たとえそういう状況下であっても耐えてやり抜いていく力が必要だと感じています。