経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.025 株式会社ファンケル(松ヶ谷明子 氏)

株式会社ファンケル(松ヶ谷明子 氏)

1980年の創業以来、無添加にこだわりつづけ、敏感肌向け化粧品のパイオニアであり、1994年には高品質・低価格なサプリメントを販売し、当時高価だった健康食品を一気に身近なものにしたサプリメントのパイオニアでもある株式会社ファンケル。今回は同社人事部長の松ヶ谷明子氏に、ファンケルのDNAとして根付いている「優しさ」とこれからのファンケルの理想像について語っていただきました。

樋口:
御社が採用をする上で大切にしているこだわりからまずお聞かせいただけますか。

松ヶ谷
当社のこだわりは選考で大学名を見ないことです。エントリーシート自体に大学名を書いていただく欄を設けていませんし、履歴書を出すタイミングも最終選考後の意思確認の段階です。その際にも大学名は見ていません。

それはどのようなお考えからなのでしょうか。

当社の理念に「もっと何かできるはず」というものがあります。これは創業者の池森賢二の言葉なのですが、学歴ではなく、その人のやりたいことや、やる気を重んじようという文化が当社にはあるのです。大学名があると不思議とそれに惑わされてしまうことも少なくありません。東大と書かれていると先入観を持ってしまい、多少話がかみ合わなくても「きっと頭が良いからだ」とそれだけで良い解釈をしまう可能性もありますから(笑)。なので当社は、学歴ではなく「もっと何かできるはず」の精神を大切にしています。それは、向上心であったり、探究心であったり、人によって様々ですが、大きく言うとチャレンジ精神ですね。

初めから余計な先入観を持たないためにあえて大学名を聞いていないのですね。それでは実際にはどのようなことを重視して採用されているのですか。

先ほど申し上げました「もっと何かできるはず」というチャレンジ精神に加え、相手を思いやる優しい気持ちを持っていること、粘り強く勇気を持って失敗を恐れず挑戦し続けることです。

その三点を選ばれた背景があればお聞かせいただけますか。

当社の成り立ちからつながっていますので、そこからお話します。創業者の池森の奥様が化粧品の肌トラブルで化粧ができなくなってしまったことがあり、その原因を池森が追求した結果、添加物がその原因の一つであることがわかりました。また、当時添加物は社会的にも問題を起こしていたので、誰でも安心して使える化粧品をと作ったのが当社の無添加化粧品なのです。そのようないきさつがあるので、企業理念に「安心・安全・優しさを追求します。」と掲げていますし、お客様はもとより、従業員や社会に対してもやさしくすることが企業のDNAとなっているのです。
また、当社はもともと化粧品で始まった会社ですが、健康食品やサプリメントにも力を入れています。参入当時健康食品は高級なもので、しっかりとした木の箱に入って売られている物もありました。これを高品質かつ低価格でお客様にご提供できないものかと考えたのが始まりです。このエピソードにもあらわれているように、当社では優しさをもとに常に「もっと何かできるはず」とチャレンジすることを大切にしているのです。この二つが企業文化であり、採用にも根付いているのです。 このような優しさとチャレンジ精神はリーダーシップにつながります。リーダーシップと謳う人は多いですが、協調性のない人は実際には社会の中で生きていけませんので、そこは注意しています。
三点目の「失敗を恐れないこと」はこれまでの二つに加え、今後のファンケルに必要だと私自身が感じたことです。「優しさ」と「甘え」は別であり、優しさの中にも「強さ」が欲しい、というのがこの三点には込められています。

なぜ「強さ」を求めていらっしゃるのでしょうか?

チャレンジ精神というのは当社でこれまでにもずっと重視し続けてきたことなのですが、失敗を恐れてしまうと徐々に新しいことにチャレンジしなくなってしまいます。ですから失敗してもへこたれずにすぐに立ち直れる人でないとチャレンジし続けられません。以前、会社説明会で学生から「すぐに立ち直るというのはどれくらいですか?」と質問されたことがあるのですが、その時には「15分で立ち直ってください」とお伝えしました。もちろん人間ですから、落ち込むのは当然です。しかし、すぐに気持ちを切り替え、次の仕事に取り組める強い心と柔軟性が大切だと考えています。

15分というと早いですね(笑)。

私の前職の影響が強いのだと思います。19年間働いていた前の会社では、「決断するときは2分で判断しなさい」「うまく事が進まなかったら修正すればよい」「それくらいのスピードと強い心と柔軟性を持ちなさい」と言われて育ってきました。ですから私自身15分で立ち直れます(笑)。一般企業と比べるとよくわかるのですが、ファンケルは社員にとってもとても優しい会社です。今後時代の流れが速くなっていく中で、企業を成長させるためにはこの優しさを大切にしつつも、もっと強い風を入れていかないといけないとも考えています。急激に変えることは良くないと思いますが、これからは「これまでのファンケルにはいないタイプだね」と言われるような人材も採用していきたいと考えています。それが私に求められていることであるようにも感じていますので。