経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.018 株式会社山櫻(市瀬和敏 氏)

株式会社山櫻(市瀬和敏 氏)

樋口:
良い上司に恵まれたのですね。しかし、それまで働くことを「指示を受けて動く」という風に捉えていた方たちを自ら考えるように変えようとすると、戸惑いが生じたのではないでしょうか。

市瀬
今がちょうど移行期ですので、実際には今でも戸惑いはあるようです。しかし、このような取り組みからどんどん吸収し、自ら考え、行動する力がついてきていると実感しています。
実はこの研修はプレゼンをしたら終わりというわけではありません。重要なのは自ら考えたものに対して最後まで責任を持つことであり、どんなに良い内容を提案しても、実行に移さなければ絵に描いた餅になってしまいます。役員に対してプレゼンする内容の完成度は正直3~4割程度ですが、プランの実行を通じて完成を上げさせるのです。

若手社員はそのような機会の中で失敗を繰り返しながら学んでいくのでしょうね。

失敗はたくさん経験した方が将来活きてきますし、自分で失敗経験をすることで、将来自分の部下が失敗をしたときの対処方法も学ぶことができます。ただし、壁にぶつかったときに、フォローするのは上司や周りの関係者の役割です。壁にぶつかったときには周りから色々な助言を得た上で答えを出せるようにしているので、失敗はあっても立ち直れないほどの挫折をすることはありません。

周囲のサポートを前提として、機会に放り込むのですね。やはり、人材が成長するかどうかはそのような機会の有無に影響されるのでしょうか。

この研修を通じて、当初はあまり目立つタイプではなかった社員にも変化が見えてきます。そのような変化を目の当たりにすると、このような環境にいかに放り込むかにより成長度合いが左右されることを改めて実感します。特に若手社員は一つの職場では本人の伸びしろは判断できませんので、プロジェクトを担当させるほか、異動も頻繁におこないたいと考えています。また、いくつかの環境を経験させることは、育成という観点ももちろんですが、社員が自分の進むべき道を考える良い機会にもなります。このことは企業と社員両方の幸せのために必要なことだと考えています。

そのように経験を積ませる中で、「この人は将来が期待できそうだ」と思う人材はどれくらい出てくるものでしょうか。

それは相当数います。

そのような期待が沸く人材と他の人材の違いは一体何なのでしょうか。

「自分はこのようにしたい」というストーリーを作れるかどうかです。その段階ができなければ、実行するにしても動けません。
それに加え、マネージャーとしてはコミュニケーションを通じて周りを巻き込む力が必要とされるでしょう。マネージャーになると周りへの指示、依頼、調整が新たな仕事として加わりますが、中には相手により伝え方を変えた方がよいケースもあります。このような場合に言い方を変えたり、周りに頼んで伝えてもらったりするなど柔軟に対応することも重要なテクニックの一つです。一人でおこなうことには限界があります。周りを巻き込み、動かすことがだんだんとできるようになることが、マネージャーの階段を一歩ずつ上がっていくことにつながるのです。