経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.012 株式会社サンセイランディック(松﨑隆司 氏)

株式会社サンセイランディック(松崎隆司 氏)

「底地」をはじめとした権利関係の複雑な不動産の再生を専門に手掛ける不動産会社として、堅実な成長を遂げるサンセイランディック。同社代表取締役の松﨑氏にその成長の裏にある人材戦略について伺いました。

樋口:
御社はこの不況の中でも堅実に成長されていらっしゃいますよね。そのような企業は個人的に「人材」がキーワードになるのではないかと思うのですが、いかがお考えですか?

松﨑:
当社は複雑な不動産の権利を調整し、新たな価値をつくり出すことを主な事業としております。製造業と異なり、自社で何かモノを作り出しているわけではなく、あくまでも「価値の創造」ですので、ある意味サービス業に近いのかもしれません。極端な話、社員ひとりひとりが当社の商品であるといっても過言ではないでしょう。 これまで堅実な成長を続けることができたのも、34年間の歴史の中で、社員一人一人が会社の代表であるという意識のもとお客様と接してきた実績の賜物だと思っています。

やはり人材が鍵になっているのですね。ところで御社は少数精鋭のイメージがありますが、一部の不動産会社では高い給与を出して組織の規模に見合わない人数を大量に採用しているケースがありますよね。

そうですね、これは入社しても半分も残らないであろうという前提があるためです。実際に、こういった会社では離職率が高く、その大半が転職をしていきます。一方当社では、できる限り長く働いて欲しいという考えのもと採用活動をしています。 その理由は二つあり、一つに、当社は入社後3年を目安として、営業が仕入れから売却までプロジェクトに関わる全ての過程を担当できるようになってもらいたいと考えていることが挙げられます。二つ目は、当社のビジネスである「価値の創造」は、問題解決のノウハウや経験がなければできないものであるという点です。これらの理由から、大量採用をするよりも組織に見合った人数を採用し、時間をかけて育てるという人材戦略が理にかなっているのです。確かに戦力化までは時間がかかりますが、3年後を見据えて採用をしていこうというのが方針です。

急がば回れの精神ですね。

そうですね。当社では「世の役に立つ、なくてはならない会社をつくり、それを永久に存続させる」という経営理念があります。手間がかかっても次世代を確実に育てていくことが、それを達成させる鍵となると確信しています。
ただし、辞めさせないことが最重要だと考えているわけではありません。合う合わないはどうしてもあるので、その社員にとって一番よい道は何かを基準に、時には違う道を勧めることも必要だと思います。 私たち経営陣は、本人の成長意欲をできる限り活かす会社づくりをしたい、社員ひとりひとりの生活に合った働き方を尊重したいと考えています。例えば出産をひかえた女性社員でも、出産後にも働きたいという意欲があるのならもちろん休みをとって戻ってきて欲しいです。
そのために特別な制度を作っているわけではないのですが、社員の要望をできるだけ優先できるように、会社と一緒に働き方を考えるというスタイルを取り入れています。今後女性の社員も増やしたいと考えているので、そこは避けられないですね。

当社も同じです。女性社員からの要望でキッズルームを作ってみたりしています。
ところで御社は今、中途採用から新卒採用メインにシフトして来ているということですが、それはどういったお考えからなのでしょうか?

今年入社11年目の社員が新卒第1期生なのですが、当社の成長において、新卒入社社員は非常に重要な役割を担う存在だと考えているからです。実際に、新卒で入社した5年目以上の社員たちが管理職など重要なポジションに立ち、よい意味で会社全体を牽引してくれていると感じています。今後も採用は新卒中心、人数が足りない場合は中途採用で補うという形で継続する予定です。
また、先ほどもお話しましたが、採用したら終わりではなく、採用してからきちんと育てていきたいというのが当社の考えです。そのための環境を整備していくこと、具体的には新入社員に適当な指導者をつけることなどが私たち経営者のすべきことだと考えています。もちろん、中途入社の社員もとても大切です。かくいう私も中途入社ですしね(笑)。
新卒には新卒しかできないことがあり、中途には中途にしかできないことがあります。ですから両方のいいところを活かすため、バランスのいい人員戦略が必要だと思っています。

ありがとうございます。松﨑社長は採用を投資と考えると、新卒や中途採用への投資はどれぐらいで回収できるとお考えですか?

実際、新卒は採用費用が割高で、1年や2年の短期でみれば損をしているかもしれませんが、5年10年のスパンで考えると確実に利益が出ていると思います。しかし、確実に投資を回収するためには、採用したら定着させ、育成しなければいけません。どの会社もそうですが、短期で辞められたら、大損ですよね。
新卒も中途も1年目で投資したコストを回収できて利益まで出せる人材もいますし、成功するまでに苦労を重ね、コスト回収までに時間のかかる社員もいます。短期的な視点で考えれば、1年目で利益を出してもらうに越したことはないのですが、長期的な視点では、苦労を知っている社員も重要だと考えております。社員に対しては、若いうちに思うような成果がなかなかでなくて苦しくても耐えて、成功するまで続けて欲しいと思っています。