経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.008 株式会社T4C(青木 孝博 氏)

株式会社T4C(青木 孝博 氏)

SAP導入コンサルティングをメインに「お客様に変革をもたらすコンサルティングのプロフェッショナル集団」T4C。平成20年度東京ワークライフバランス認定企業に選ばれるなど、さまざまな人事施策で注目を集める同社の想いや実際の取り組みについて伺いました。

樋口:
御社の社長はリクルート出身ということですが、私が知っているリクルートのイメージと御社の掲げているビジョンを拝見したところギャップを感じました。リクルートでのご経験と現在の想いは、どのようなところで関連していたり、逆に反面教師としているのか。その過程で根幹の考え方がどのようにできていったのか、という点から伺ってもよろしいでしょうか。

青木:
リクルートはスタープレイヤーが2割いれば、全体売上の8割は稼げるという、世に言われているようなスタープレイヤー主義、一点豪華主義でも経営が成り立ちます。2割の優秀な人材と6割の普通の人材、そして残りの2割は厳しい言い方をすると去ってもいいという、良い意味で新陳代謝の活発な、ドラスティックな考えに基づいて経営をしている会社です。 もちろん経営を安定させるために、営業職として入社1日目からでも売れるような商品作りや仕組み作り、マニュアル作りといったことに徹底的に時間をかけています。リクルートは本当に営業デビュー初日に初受注や予算・目標達成率200%が可能な会社なのです。一方の我々は、SAP導入コンサルティングという事業領域からスタートしましたが、この業界は一人前のコンサルタントとして市場で認められるまで10年かかるという長いスパンでの勝負になります。そのような違いがありますから、おのずから育成、それから個人の成長に関する考え方、取り組み方を180度変えなければならないと痛感しまして、T4Cにも通ずるリクルート流の風土は何か、逆にリクルートの論理がまったく通じないものは何かという選別を徹底的に議論しました。そこで行き着いたのが、「T4Cの成長力というのは採用力と定着力と育成力である」ということです。この3つが成り立たない限り、売上拡大、それから会社、個人の成長がないという結論に至り、むしろアンチリクルート的なものをあえて打ち出したりしながら、地道に着実にやってきました。

私自身はもともとヒューレット・パッカードのカルチャーで育てられてきましたので、現在のビジネスと育てられてきたカルチャーに選択の余地がなく、似たような考えに立脚しています。一方の御社はリクルートでの経験があり、商品を作る発想ですとか、強者の論理といった選択肢も取りうると思います。例えば今のお話では、SAPの事業から出発したのでこういうマネジメントを念頭に置いておられるということでしたが、違う商売、違うやり方をしてみたいという思いはありますか?

もちろんそれはあります。ですから、ある事業の可能性をディスカッションしたりもしますし、そもそもSAPという枠以外の新規事業の提案やチャレンジができる風土、仕組みがあるのがT4Cの魅力であると考えています。それは、私や代表(代表取締役社長 山下崇文 氏)だけではなく、ミドルマネジメントや若手クラスまでがそう思っているはずです。

これはちょっと変な質問かもしれませんが、経営目線で見た時に、会社の収益と社員のモチベーションとお客様という3つを並べると、その優先順位は明確にあるのでしょうか。

ハッピートライアングルであることが望ましいとは思いますが、収益豊かなステージまでには達していないというのが実情です。とはいえ利益は度外視していますとは言い切れませんし、かといって社員が1人でも欠けるとその分の売上がまったく立たない、「社員の市場価値×社員数=売上」というビジネス形態ですから、社員の幸せを考えないでいいのかというとそうでもありません。ですからなかなか難しい質問ですね。

これだけの人事施策を打ち出しておられるという観点からすると、実際には社員にフォーカスしているようにも感じられますが。

現在79名の社員(2009年6月現在)がいますが、スタッフ部門はマネージャー3名、メンバー2名、それに私を入れた計6名体制です。実は2年前から6名と変わっていませんが、その時は50数名の社員数でしたから、この規模にしてこのスタッフ部門の人数というのは非常に多いと思います。逆にこの部門にこれだけ投資をするということは、社員が活躍できる環境を整えるのがスタッフ部門の役割であるという代表の想いでもあります。そうした観点から見ると社員にフォーカスしていると言えるかもしれないですね。

こうした仕組みは創業以来少しずつできあがってきたのですか。

ブラッシュアップしてきていると思います。と言いますのは、 10年来同じ会社で志を同じにしてきた者たちが集まって創業しましたので、当初はお互いの顔も見えますし、方向性も一緒だったわけです。ところが、会社の規模が大きくなり、社員が増えていくにつれて、色々なことがツーカーでは通用しなくなるステージに入っていきますよね。弊社でも、その後に入ってきた社員が大多数を占めるにしたがって、ベクトルを一致させるためにモチベーションをどう上げていこうか試行錯誤しながら工夫をしてきた結果、こうした制度の完成度が徐々に高まってきているのではないかと思います。

社員の処遇やモチベーションを上げる工夫を常に考えているといった感じでしょうか。

それこそがまさに スタッフ部門の仕事だと思っています。小山薫堂さんではありませんが、感動はサプライズから生まれると信じていますのでどんなサプライズを社員に対して 仕掛けようかなと 常に考えています。