経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.004 ライブレボリューション(増永 寛之 氏)

ライブレボリューション(増永 寛之 氏)

樋口:
新卒採用を始めた頃の失敗談はありますか?

増永:
当初、会社説明会を私ではなく他の者に任せていました。参加者アンケートを見ると、ものすごく良かったのですよ。ですから、一度聞いてみようと思って隣の部屋で会社説明会を聞いてみたんです。ところが全然ダメでした。もう怒りがこみ上げてきて仕方がありませんでしたね(笑)。どうしてかというと、1つにはモバイル広告がこれからこんなに伸びますという事業の素晴らしさ、そしてもう1つが会社の歴史を語っていたからです。弊社は創業時にものすごく苦労をしているので、純粋な学生たちは感動してくれます。でも、それでは駄目なのです。ライブレボリューションはライブレボリューションの理念や文化、これでアピールすると決めていたのですから。すぐに理念を前面に押し出して、その理念に合う人に来て欲しいという話に全部変えました。
ちなみに会社説明会でありがちな例として、できる社員が出てくるとか、社長が出てくるというのがありますが、弊社では一切ありません。

どういうことですか、できる社員や社長は前に出て語らないのですか?

会社説明会で話す内容というのは、誰が話しても同じような話にならなければいけないというのが私の考えです。要するにあの人でなければ、できる社員・社長でなければというのではなく、メンバーの誰が会社を説明しても同じようにそのよさを伝えられるようでなければ駄目だと宣言したのです。いくら採用が大事とはいえ、できる社員や社長が毎回出られるとは限らないわけですから。弊社ではそう宣言したので、皆が同じように話して、誰がやっても満足できる会社説明会になっています。実際に、内定者や1年生もやっていますよ。
誰が聞いても満足するというのは、結局のところいい会社だからです。いい制度、いい社風、いい倫理。すべて揃っているから誰が聞いても感動するわけです。ベンチャー企業の多くは、やはり社長の魅力や優秀さといった点で差別化を図って学生をひきつけようとしているようですが、会社組織なのに属人的なものに頼るなんてナンセンスだというのが私の考えです。実際、弊社はそれでやっていますし、最終面接まで私は一切当社を志望している学生には会いません。

それは、すごいですね。

そうしないと効率よく運営できません。また、私(社長)といった一個人ではなく、理念を気に入って入ってくれる人を採用できません。逆に言えば、一個人の個性や魅力に頼らず、会社やその理念だけで魅力が伝わる会社組織にしなければならないのです。会社が好き、会社にロイヤリテイーがあるから入社したいというのであって、増永寛之個人は一切関係ない、そういうやり方をしています。そうしないと永続する会社をつくれないと思っています。

わかっていながらも、そこまで突き詰めて行動できるところがすごい。すごく深いなあと思います。

二点目としては、接点(機会)を増やすということでしょうか。我々のような小さな企業はいわゆる知名度もなければ信用もないところから始まっています。当社であれば、そもそも学生との接点がない事業形態(モバイル広告代理店事業)ですので、学生の間での知名度が全くないという悩みが当然ながらあるわけです。でも、そんなことはわかりきっていることなので、ではどうするかとなったときに、「就活セミナーであれば就活生の多くが対象であり興味を持つのではないか」と考え、企画して参加してもらいました。
これは絶大な効果があって、学生間の知名度が一気に上がりました。要するに、欲しい人を採るという目的だけではなく、知名度を上げることに注力したのです。弊社の場合は学生にも一般的にもまったく知名度がなかったので、学生、特に就活生に対して知名度を上げていく、そこに焦点を絞ったということですね。

(インタビュー開始前の雑談で)募集(求人広告等)にはあまりお金はかけないですよ、とおっしゃっていましたが、それは採用責任者の方がどうやって低コストで集めるか一生懸命考えられたわけですよね。

そういうことです。お金がないからこの金額でやってくださいとお願いしました。ちなみに費用対効果という観点からいけば、そのときに練りに練ったいわゆる告知メール1通で1,000名の応募が入ったというのがありました。どうして集客できたのかというと、当然、採用責任者である金子(取締役 金子真歩氏)の実力なのですが、もうひとつには、要するにPRができる“いい会社”だったということも挙げられます。

1番がベースにあるわけですね。

そうです。そのときはまさかそんなに応募が来るとは思っていませんでしたから、それを捌くだけで終わってしまいました。移転前のオフィスで会議室にも入りきれませんでしたので、1年目は3,000名で終わりました。翌年は現在のオフィスに移転しましたので9,000名まで増えましたが、1日2回を延々と行っていて、それはもう大変でした(笑)

その頃から増永さん以外の方がセミナーをしていたのですか?

そうですね、私は一切タッチしていなくて、金子とあとは内定者や新入社員です。今年は現時点(2009年4月上旬現在)で20,000名を越えていますが、2人体制でやっていますね。

自分の会社が良くないと採用活動のパフォーマンスが落ちるというか、嘘をついたとしても結局はバレるし、採用担当者もやりづらいので、まずはいい会社にしましょう。そして、それを最大限に伝えて集めていくということですね。でも、中小企業経営者の立場でお話を聞いていると、その根本にあるのは会社の将来が採用で決まるという増永さんの執念深さの違いでしょうね。

そうですね。樋口さんの著書には採用で9割決まると書いてありましたが、さらに踏み込んで9割5分。

(笑)

それ程までに採用に集中しています。

高いものを求めれば求めるほど、採用で決まってしまうという想いからですね。

そうです。妥協すれば7割でも5割でもいいと思いますが、本当にいい会社をつくろうと思っていますので、優秀な人をいかに採るかというその一点を突き詰めています。それを実現するために大切なのが次にお話しする3つ目のポイントです。

なるほど。

3つめのポイントは“いかに見抜くか”です。ここを失敗すると全てが無駄になってしまいます。私たちは選考を「セレクション」と呼んでいますが、これに失敗してしまうと、あとから入ってきた人が会社のいい部分を全て破壊していってしまうので、セレクションに失敗するともう本当に全部アウトです。
ですから、いかに人を見抜くかについてものすごく研究を重ねています。そういう意味では、“いい会社をつくる”というコンセプトから社内制度まで、ほとんど私が考えました。でも、どうしたら学生が集まるのか?という部分や具体的なセレクション方法は金子が考えています。

増永さんはそれを属人的に解決しようとしたのではないですよね?

はい、システムですね。

私はまだ属人です。そこはすごいなあと思うし、どう見抜くかということも考えさせたわけですよね。

見抜かなければならないという命題は与えましたが、どうしたら見抜けるのかという点を金子がよく研究してくれましたね。どういう人を採らなければいけないか、ということは常に私が言っていますので、そういう人であるか否かをどうやったら見抜けるのか、そこの部分を追求してもらっているというイメージです。

金子さんは人事の専門家ではないですよね?

もともとは営業です。大和証券で営業をしていて同社の戦略企画部に移りました。その部署にいたときに私と出会い、一緒に独立をして今まさに採用を担当してもらっています。何で金子かというと、才能があることは当然としても、やはり当社のナンバー2という人材だからです。であれば、一番重要であるととらえている採用に彼を当てるべきだと。ちなみに、採用は一番大事ですが、社長自らがやってはいけない仕事でもあると私は考えています。例外は最終面接、これだけは社長が決めなければいけない。弊社は8次選考まで実施していますが、私は最終面接以外関与しません。そうするとそれ以外ができる人というのは、ナンバー2しかいないわけです。
実は中途採用のときから金子に担当させていました。でも、任せる前に私が面接しているところを隣に座らせて学んでもらいました。なので、私の感覚を身につけた上でやってくれています。