樋口:
自由とか自己実現というのは、割とどの会社でも表面上は言っているわけではないですか。来てくれた学生が、それを実感して船井総研に入ろうと思うための仕掛けというのは何かあるのですか。
五十棲:
先輩に会わせることですね。
先輩社員ですか。若手ですか。
若手もあるし、時間的な制約は多少ありますが、もちろんわれわれも希望すれば基本的には対応します。

そうなのですか。では、実際に働いている若手が接して話をすることで船井総研は本当に自由なんだな、自己実現ができるんだなということが実感できて、動機付けされている感じですか。
最終面接の場というのは、僕らが選考するというのもありますけれど、彼らが選ぶ場でもあります。特に優秀で欲しいなと思った人は、選考するというより、われわれのほうが来てほしいという口説き型の最終面接にどうしてもなりますよね。そのときに彼らが船井総研をどう捉えているかというと、やっぱり自分たちより2~3歳ぐらい年上の社員がどう活き活きと仕事をしているかというのを見ているわけなんです。例えば、徹夜明けだったのに笑顔で接してくれたとか。何か夢を持ちながら仕事をしているとか。そういう部分をやっぱり見ているのですよね。
うん、そうですね。
OB・OG訪問をする学生というのは、船井総研だけではなくて、もちろん他の会社にも行っているわけですよ。他の会社に行って、それなりの対応をされたと。船井総研へ来て本当に活き活きと笑顔で対応してもらって、しかもうちの会社はこれの他にも、たとえ学生であってもきちんと出迎えるとか、見送りをするとか、そういうことをきちんとやっていますので、自分のためにここまでやってもらったということに対して、逆に感動してしまうのですね。彼らはそういう非常に細かい部分を見ていて、そういうところがとてもよかった、こういう会社で働きたいと言ってくる学生が多いです。それがたまたまとかではなくて、わりと共通してそういう発言をしますよね。
なるほど。採用のマッチングは能力と価値観だと言われますが、いまのお話しは価値観、つまり学生が若手と会って体感して志望動機を上げる感じなのですね。
そうです。明らかに価値観採用をしています。もちろん、能力について見ていないことはないですけれど、面接を30分もすれば、こちらからの質問をきちんと捕まえられているかとか、コミュニケーションのキャッチボールができなければ、基本的にはそういう部分でのスキルはないと判断できます。入社資格ですからもちろん能力も必要ですけど、能力よりも重視しているのはやっぱり価値観です。
なるほど。
ですから、特に船井総研の考え方というものを理解したうえで選考に進んでもらいます。われわれはコンサルテイング会社ですし、創業者(船井幸雄最高顧問)の影響から社長の小山から社員まで相当数の書籍を発刊していますので、会社説明会に来た学生には、少なくとも3冊~5冊ぐらいは読んでくるように言っています。そのうえで、そういう会社でいいと思えば来てくださいという形をとっています。
価値観にこだわるのは、価値観にマッチした人のほうが仕事ができるようになるとか、売上が上がるとか、何かそんな感じなのですか。
それもありますけど、外資系のコンサルテイング会社と決定的に違うのは、個人の業績が悪くても、船井総研という会社が好きであれば定年まで働いていただくのは全然問題ないという考えなんです。こういう考え方というのは、外資系のコンサルテイング会社にはまずないはずです。日本のコンサルテイング会社でも、個人の業績中心にやっている会社が圧倒的に多いので、コンサルテイング会社の中では極めて異例の考え方をしていると思います。つまり、短期で見ていないということですよ。短期で見ずに結果的に長く勤めていただいたほうが、(会社としても)本人から得る利益は多いという考え方なのですよね。
本人から得る?
コンサルタントというのは、彼ら一人一人が商品じゃないですか。その商品が一瞬稼いですぐに辞めていく会社より、スランプに陥って困ったときとか、苦労したときとか、悩んだときにきちんと支えてくれる会社のほうがいいという考え方です。やっぱり一時的にぽんと落ちる時期があるんですけれど、外資系だとそれでほぼクビになったりするわけです。でも船井総研は、多少時間かかってもいいし、その彼らがスランプを脱して、業績がよくなったときに、(売上貢献という形で)やっぱり返してくれますので、結果的にいまの役員とか、マネージャークラスでもそういう時期を乗り越えてきたメンバーが残っているわけですよ。
それはいわゆる社風、文化そのものですね。能力をあまり見ないというお話をされましたが、結果としてどういう人を選んでおられるのでしょう、資質とか能力という面から見ると。
個性が強いというか、自分を持っている人ですよね。能力を見るということは、ある一定の枠にはめた才能を見ているということではないですか。才能というのは、ある意味スポーツで例えると分かりやすいと思うのですけど、人の数だけ分野があると思っているというか、そこまで細かく分けなくても、例えばスポーツの競技種目で野球が得意な人がサッカーが得意とは限らないし、例えばイチローであっても、水泳では北島康介には勝てないわけですよ。もっと言うと、オリンピックに出られないような水泳選手にも勝てないわけではないですか。だから、うちの考え方というのは、得意なものはどこでも伸ばせという考えなんです。
なるほど。
才能は、大げさに言うと人の数だけありますし。そこまで言わないにしても、かなり多くあるといわれています。だから、自分の得意分野はどこなのだと。例えば、好きなこととか得意なところが、尖っているほうがいいわけですよね。それに関しては、徹夜しようが、仕事とかプライベートに関係なく、その情報や知識を得るために夢中になれる人間のほうがいいわけですよ、うちは。だから、そういうものを持っている人は間違いなくモノになりますよ。コンサルタントというのは、あるものに突き抜けて、最終的に日本でその分野でトップクラスになれば、日本中から仕事が来ますから。ですので、その突き抜けようというものを感じさせるマインドがあれば、基本的には何をやってもいいということですよ。
非常に興味深いので、もう少し教えて欲しいのですが。船井総研さんぐらいの一流企業になると、立派な大学を出た学生とか、いわゆる頭がいい学生となりがちではないですか。いま五十棲さんのおっしゃったことというのは、かなり違いがあったものですから。例えば、社長や他の役員の方はそういうことには反対しないのですか。
しないです。経営層がみんな優秀な大学を出ているわけではないですし、尖がっている、個性の強い人が多いですから。
トップがそうなのですね。だから、皆がそうしたことを認めているし、認められるのですね。それは、すごいですね。
それぞれが褒め合い、認め合い、助け合うというような部分が、船井総研の中では組織の基本的な考え方なのですね。

普通あんまりないですね。
そうですね。もともとは、船井流の真骨頂ともいわれる「長所伸展法」という考え方がありますから、人の短所を見て短所をけなすような人というのは、もうそこで価値観が違うわけですよ。そんなのは、面接のときのコミュニケーションを通じて、それとなく分かってきます。特に中途採用に関しては、前の会社で嫌なことだったことについて聞き出して、本音で喋ってくれるとすぐ分かりますよね。
船井総研さんのお話を伺っていると、上から下まで尖がっている人たちの集まりで、そういう文化を持っているとすると、個人のコンサルタントの集まりみたいな、こんなイメージで考えればいいわけですね。非常に特異な会社ですよね。
特異です。奇跡の会社だと僕は思っています。
奇跡の会社!?
奇跡の会社ですよ。(笑)
奇跡というのは、それだけの人が集合して、会社の目標に向かって仕事をしているということが奇跡なのですか。
極めてルールとか規則が少ない会社だと、僕は思いますね。だから、本人の自覚に任せている部分というのが、やっぱり多いわけですよ。そうすると、一人一人の個性がすごく強くて、ある分野では飛び抜けていますけど、ある部分ではどうなのかなと思うようなこともあったりするわけです。でも、どうなのかなという部分だけを見てしまうと、船井総研は組織として成立しなくなって、結果的に人が辞めてしまうと思うのです。認められていないとか、苦手なことばかり言われると一時的には確かにやるのかもしれないけど、最終的には辞めていってしまうわけですよ。会社としては、コンサルタントの人数が減れば当然業績は悪くなります。会社の業績を伸ばそうと思うと、人の流出を止めて、人が増えれば業績は伸びますので、やっぱり本人たちがやりたいとか、自分が好きなことに集中できるような環境をどうつくるかというのがわれわれの仕事だと思っています。出来るだけそれ以外の仕事というのは、やらなくていいのであれば、やらなくてもいいような指示を出すし、最低限やらないといけないとなれば、そこには極力時間をかけずにできるようにしていきたいと考えています。ですから、特に会議などというのは極力少なくしなさいということは言っています。お客さんのほうを向いて仕事をしてもらったほうがいいですから。

